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村上氏写真

村上 智彦(むらかみ・ともひこ)

1961年、北海道歌登村(現・枝幸町)生まれ。金沢医科大学卒業後、自治医大に入局。2000年、旧・瀬棚町(北海道)の町立診療所の所長に就任。夕張市立総合病院の閉鎖に伴い、07年4月、医療法人財団「夕張希望の杜」を設立し理事長に就任同時に、財団が運営する夕張医療センターのセンター長に就任。専門分野は地域医療、予防医学、地域包括ケア、チーム医療。近著書に『村上スキーム』。

11月7日

11月2日(日)は慈恵医大の文化祭の講演とシンポジウムに呼ばれて東京へ行きました。月曜日の講演前に少し時間があり、東京の愛宕神社に生まれて初めて参拝できました。

ビルの谷間にトンネルがあり、そこを抜けると何やら鬱蒼とした山になっていて、道路際にはガラス張りのエレベーターがあり、乗って上がると木の床の渡り廊下に出ます。

そこを進むと昔ながらの神社の境内が広がっていて、とても東京の真ん中とは思えない風景が広がっていました。

箱庭のような緑の林の中には鯉が泳ぐ池があり、和船が浮かび、いかにも年代と格式を感じさせる石畳や鳥居が並んでいます。

駐車場には和風の空間に妙に溶け込んだ小さな昔のルノーが停まっています。境内の向かい側にはNHKの博物館もあり、少しだけ見学ができました。

とても落ち着ける風景で、しばしの都会のオアシスといった空間を満喫し、癒される時間を過ごすことができました。

忙しいからこそ感じられる、こんな時間を過ごせたことに感謝しながら、講演とシンポジウムに出てきたのですが、久しぶりにとても刺激になる先生方にお会いすることができました。

そこで聞いた言葉で印象に残ったのが、「出る釘は打たれるが、出すぎた釘は打たれない」という言葉でした。すごい先生が世の中にはいるものです。

都会の専門医でも、地域の総合医でも、熱意や姿勢に変わりはないと思えました。

外に出るのは大変ですが、得られるものも大きいと改めて思える1日になりました。

羽田から最終便に乗り、夕張に着いたら夜中の12時になっていました。書類整理をして帰ろうとしたら大雪で、夏タイヤの車で冷や汗をかきながらの帰宅となりました。

夕張医療センターでは11月から医師が1人増えました。

早速取材が来ていて赴任したばかりの和田先生も驚いていた様子ですが、これからは夕張の医療ばかりではなく北海道全体の医療を考えて、医師不足で困っていて、行政や住民が限られた医療資源を認識して大切にしようとしている地域を支援していきたいと思っています。

11月14日

12月6日(土)に、北海道厚生年金会館(札幌市)で「北海道予防医療セミナー」が開催されます。このセミナーは医療費の高い北海道で、医療関係者や行政担当者、議会の関係者の皆さんにも声をかけて、予防医療の大切さや実践方法のアドバイスをすることを目的に開催されることになりました。

全国各地で医療崩壊が報道されている中で、住民自身が立ち上がり、考えて、病気を減らす努力をすることは、財政難に苦しむ自治体には大切なことですし、場合によっては地域医療の確保につながります。

北海道大学大学院医学研究科医療システム学教授の前沢政次先生が中心になり、北海道で最も医療費の安い地域である更別村の国保診療所所長である山田康介先生の基調講演や地域医療を守る地方議員連盟の前代表である金子益三さん、僻地で行政や住民の努力で良質な地域医療を確保している寿都町の中川貴史先生、保健師の西弘美さん、そして私もパネリストとして参加するシンポジウムが企画されています。

医師を確保できない悩みはどこの地域でも大きな課題になっています。

その悩みの原因が自治体自身に地域医療に対する何のビジョンもなく、ただの言い訳や穴埋めのために医師を探したり、住民自身が医療資源が限られているということを理解しないことに起因しているように思えます。

当院の永森医師がある日の話し合いの中で「都市部の専門医療は病気と戦う医療だが、高齢化が進んだ地域の医療は住民を支える医療が中心であるべきではないか」と提言していましたが、地域医療の先進地である長野の佐久総合病院で研修した彼らしい言葉だと思います。

その意味でも予防医療の重要性を理解し、スピード感を持って具体化することが大切だと思います。「今までと同じように」「以前と同じように」と無難な解決方法で問題を先送りする自治体は夕張のように破綻しないと改善はできないと思います。

おそらく医療の質が大切なのであって、病院の大きさや医師の人数だけでは地域医療は守れません。

このセミナーは地域医療に興味のある方であれば医師以外の方は無料で参加できますので、是非ご参加ください。

最近の夕張ではインフルエンザワクチンを頑張って接種しています。以前から私は肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンを積極的に接種してきました。

行政の協力がなくてもこれなら何とかやっていけます。

そんな中で嬉しいことがありました。

最近の医学論文で、「肺炎球菌ワクチンを接種すると心筋梗塞の予防になった」というものが発表されました。これ以外にも「インフルエンザワクチンを接種していると脳梗塞が予防された」といった論文もあります。

要は「体の中で炎症が起こると血管が傷んで動脈硬化が促進される」ということなのだと思います。日本では予防接種があまり積極的に行われていませんが、予算が限られた財政再建団体だからこそ費用効果率の高い予防医療を推進していきたいと思います