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實田 健
日本ヒューレット・パッカード

 「Xen」は,英国ケンブリッジ大学コンピュータ研究所から始まった,広域分散コンピューティングのインフラ作りを目指す「Xenoserverプロジェクト」から生まれた,オープンソースの仮想化ソフトウエアである。2002年ころから開発が始まり,2003年に発表された。GNU General Public License(GNU GPL)というライセンスのもとでソースコードをはじめとする各種プログラムや情報が公開されており,今なおオープンソース・コミュニティにおいて活発な開発が進められている。

 その一方,2005年にはXenの開発者らによってXenをベースとしたエンタープライズ・ソリューションを提供するXenSource社が発足し,事業が開始された。同社は創業から2年後の2007年に,米Citrix Systemsが約5億ドルで買収し,Citrix Systems社の一部門として現在に至っている。

 またXenは,米Novellが提供するSUSE Linux Enterprise Server(SLES)や米Red Hatが提供するRed Hat Enterprise Linux(RHEL)などLinuxの商用ディストリビューションに採用されているほか,米OracleがOracle VMとして,米Sun MicrosystemsがxVM Serverとして提供するなど様々な動きがある。

 PCサーバーの分野では,様々なサーバー仮想化ソフトウエアが登場しているが,Xenはその中で最も多くのベンダーがサポートを表明している(図1)。これからも急激に進化し,注目を集めていくのは間違いない。

図1●拡大するXenの関連ソフト
図1●拡大するXenの関連ソフト
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Xenはハイパーバイザー型の仮想化ソフト

 Xenはハイパーバイザー型または仮想マシン・モニター型のアーキテクチャを採用した仮想化ソフトウエアである。もちろん,ハイパーバイザーそのものはIBMのメインフレームで最初に実装された技術であるが,x86アーキテクチャのハードウエアという普及製品で動作し,世の中に広くハイパーバイザー型の仮想化ソフトウエアを知らしめた,という意味でXenの位置付けは大きい。

 他のハイパーバイザー型仮想化ソフトと比較してXenが特徴的である点は,大きく二つある。

 第一には,準仮想化(Para-Virtualization)と呼ばれる技術を採用し,仮想化による処理性能の低下を非常に小さくするよう設計されている点が挙げられる(図2)。

図2●準仮想化と完全仮想化の違い
図2●準仮想化と完全仮想化の違い
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 準仮想化を簡単にいうと,Xenの仮想マシンにインストールするゲストOS自体を,あらかじめXen用に修正しておくことで,オーバーヘッドを少なくし,物理マシンと遜色ないパフォーマンスを発揮させる技術である。ソースコードが公開されているLinuxをゲストOSにする場合,非常に高い効果を上げることができる。

 Xenは準仮想化に加えて,ゲストOSの修正が不要な完全仮想化(Full-Virtualization)にも対応している。準仮想化ではXen用にOS(カーネル)を修正する必要があるため,ソースコードを一般向けに公開していないWindowsは動作させることができなかった。しかし,CPUのようなハードウエアが「Intel Virtualization Technology(Intel VT)」や「AMD Virtualization(AMD-V)」といった仮想化支援機能を搭載したことによって,Xenの上でWindowsなども動作させることが可能となっている。

 一般的に,完全仮想化は準仮想化に対してオーバーヘッドが大きく,パフォーマンスが悪くなってしまうのだが,それを改善するため,Windows用の準仮想化ドライバというソフトウエアも開発されている。デバイス・ドライバのように,OSごとに用意しなければならないものだが,これを利用すると完全仮想化でも以前に比べると高い性能が発揮できるようになる。

 第二の特徴は,オープンソースのソフトウエアであることだ。これは,ほかの仮想化ソフトと最も大きく異なるポイントである。一昔前までは商用のOSやアプリケーションは,それらを作成し販売する企業の資産であり,ソースコードの中身についてはブラックボックスであるのが一般的だった。しかし,Linuxの登場を皮切りに,様々なOSやアプリケーションのソースが公開され,だれでもその中身を見られるようになり,企業の評価も高まっている。

 オープンソース・ソフトウエアであることの利点としては,大きく次の三つが挙げられる。

(1)世界中の人がだれでも開発にかかわることができるため,日々技術が更新される
(2)無料で使える
(3)特定メーカーの製品に依存しない

 Xenがオープンソースで開発が進められていることによって,仮想化ソフト業界,さらにはIT業界そのものに与えたインパクトは非常に大きい。

 前述のように登場から2年後にXenSource社が発足,さらにその2年後に約5億ドルもの巨額で買収という一連の流れも,Xenがオープンソースで開発されることにより,急激に技術革新が起こり,ソフトウエアとしての価値が高まったからにほかならない。

 各種Linuxディストリビューションに標準でXenが搭載されるようになったことや,CitrixのXenServerという商用版以外にもVitual IronやOracle VMやxVM ServerといったXenベースの商用仮想化ソフトが次々と登場したことも,オープンソースであるために実現したと言える。

 導入については無償であるという点は,VMware社のホストOS型の仮想化ソフトウエアであるVMware Serverが無償化されるなど,商用の仮想化製品のライセンス料金にも影響を与えている。