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 ビザでは10年働いてきたが、2005年にビザのグローバルネットワークを維持してきた子会社、米イノバントのCIO(最高情報責任者)に就任した。その後、昨年10月にイノバントなど5つの事業体を合併した際、ビザの初代CIOになった。

 イノバントCIOだった2006年9月に、国際的な決済ネットワークである「ビザ・インテグレイテッド・ペイメント・プラットフォーム(VIP)」を完成させた。これで、ハード、ソフトともに将来のカード市場の多様化や成長に対応できる体制を整え、1つの節目となった。

マイケル・L・ドレイヤー氏
マイケル・L・ドレイヤー氏
ビザは、クレジットカードのブランド「VISA」を世界で展開中。1958年に米バンク・オブ・アメリカが発行し始めた「バンク・アメリカード」を、国際ブランドとして強化するために1976年に「VISAカード」に名義変更したのが同社の前身となる。今年3月にニューヨーク証券取引所に上場。日本では三井住友カードや三菱UFJニコス、トヨタファイナンスなどがVISAカードを発行している。

 もっとも、長年利用してきた情報コード体系や複雑なシステム構成から脱却して、より速く、よりコスト効率のいいネットワークに移行したとはいえ、ビザには世界最大の決済ネットワーク会社として様々な課題が残っている。

 ビザは世界に1万6600のVISAカード発行金融機関を抱え、計16憶枚のカードを発行している。例えば2007年10~12月の3カ月間で3兆8000憶ドル規模の決済を扱い、500億回の決済があった。1回の決済が約1.4秒で処理される計算になる。しかも、世界2900万店のVISAカード取扱店で24時間常に誰かが買い物をしている。つまり、VIPにはものすごい負荷がかかっているのだ。

 一方、米国では消費者の支払いの39%が現金で、 19%が小切手で行われ、VISAカードによる支払いはクレジットカード最大手とはいっても15%にとどまっている。VISAカードを使った取引が伸びる余地はまだ無限大にある。

 IT(情報技術)がビジネスの問題を最も安いコストで解決してビジネスを成功に導くという点では、ほかの企業とスタンスは変わらない。しかし、当社が他社と異なるのは、世界中で24時間にわたって誰かが買い物をしているので、システムがダウンしている時間があってはならないという点だ。

 例えば年に2回、約70項目にわたる機能の強化や追加などのアップデートをする。VISAカードの発行金融機関の数などを考えると、作業量は膨大であり、技術陣が総出で夜を徹する。例えばサイン無しでカード決済ができるようにするための本人認証機能の強化など、ビジネスの需要に従って様々な機能強化項目が生まれる。消費者にいかにして多様化するサービスを提供するかがつぶさに分かるので、このアップデート作業は大変魅力的なイベントだ。

 最も大切なことは、カードを使っている消費者も取扱店も、サービスの核となる決済ネットワークで大規模な更改作業が実施されていることに全く気がつかないで済むということだ。

突き詰めれば「決済」の会社、そこを極める

 VIPを数年がかりで構築していた時も、クレジットカードとデビットカードの膨大なデータの伝達経路を制御する通信機器を1つに統合するなど、システムの機械的な仕組みや開発・設計プロセスにおいていくつもの画期的な取り組みをした。そんなエンジニアリング面での驚くべき変貌の現場に立ち会うことができ、実に楽しかった。だが、カード利用者は劇的な技術革新が決済の裏側で起こっていたとは知らなかっただろう。誰も変化に気づかないし、知らない。これこそが私たちのビジネスの核なのだ。

 全く気づかれないようにするのは困難なことだが、それを成し遂げるからこそエキサイティングなのである。ビザの技術陣は献身的に働き、最もふさわしい技術を探り当てるという素晴らしいDNAを持っている。

 イノバントのCIOになる前は、ビザUSAのコマーシャル・ソリューション部門の上級副社長で、自営業から大企業まで様々なビジネスのための製品開発を担当していた。それぞれのビジネスそのものと、そこで使われる特殊な言葉を覚えるのに苦労してプレッシャーを感じたりもした。だが、IT分野と実業分野を行ったり来たりして両方の言語を理解できるようになったことが、現在、VIPの柔軟性を生かして新たなビジネスチャンスにつなげることを考える際にとても役立っている。

 非接触型カードなど、最先端のわくわくするような技術はたくさんあるが、突き詰めていくとビザはやはり「決済」の会社。決済をいかに安全に柔軟に効率良く運用する技術を維持・進化させられるかということが、私の、そしてビザ自身の「来る道」であり「向かう進路」である。

マイケル・L・ドレイヤー氏
米ビザ 最高情報責任者
米ワシントン州立大学で心理学を専攻後、マーケティングと 金融の修士号を取得。米バンク・オブ・アメリカなどの幹部 を経て、1998年にビザに入社。2005年にビザの技術ネット ワーク部門を束ねていた子会社イノバントのCIOに就任。 2007年にビザがイノバントを統合して現職に就任。