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 日経ニューメディア主催のセミナー「完全デジタル化に向けたNHKの次世代戦略」が,2008年12月15日に東京都内で開催された。今井義典・副会長の基調講演のほか,NHKの5人の担当者が「次期中期経営計画」や「地上波放送のデジタル化対応」,「国際放送の展望」,「NHKオンデマンド」,「スーパーハイビジョン」をテーマに講演した。今回はこの中から,NHK技術局計画部の森山繁樹・担当部長の講演を基に,2011年7月までの地上波放送の完全デジタル移行に向けたNHKの取り組みを紹介する。

セミナーで講演する森山担当部長
写真:セミナーで講演する森山担当部長
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 2011年7月の地上アナログ放送の終了までに視聴者がデジタル放送に移行できるように,NHKが行う取り組みについて森山氏(写真)は,送信側の難所は小規模中継局の整備になるという。例えば2008年12月には,沖縄県・八重山諸島の石垣中継局が試験放送を開始した。同様に関東地方では,「最後の不感地域」といわれる千葉県・房総半島の館山中継局や勝浦中継局でも,試験電波が送出された。

 放送法によってNHKは,日本全国に「広くあまねく」地上デジタル放送を届けることが義務付けられている。2008年12月初旬までに整備されたデジタル中継局は約600局であり,全国のアナログ放送視聴世帯の約96%をカバーするまでになった。2年後の2010年末までには,あと1600もの置局を行わなければならない。置局についてはNHKの経営委員会にも逐次報告され,その進捗(しんちょく)状況が管理されている。これから2年間は,相当のスビード感が求められる。

図1:地上デジタル放送の受信世帯分布
図1:地上デジタル放送の受信世帯分布
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 この1600の中継局がカバーするエリアは、わずか2%である(ただし,あとで説明する要因などで変わる可能性がある)。山間部や離島といった遠隔地における難視聴地域が中心になるであろうこれらの地域は娯楽に乏しく,過疎・高齢化している世帯が少なくない。NHKのミッションは,こうした地域と都市部との情報格差をなくし,様々な番組や防災情報などを届けることにある。

 現在のテレビ受信総世帯は,約4960万世帯である(図1)。2010年末のカバー率である98%に相当するのは約4860万世帯になる。直接受信(DTH)世帯は約1800万世帯,ケーブルテレビ(CATV)による受信が約2200万世帯となる。そして山間部だけではなく,都市部でもビル陰や地形の関係で生じる難視聴エリアや,デジタル混信といった問題も発生する。筆者が問題意識を持ったものが,デジタル電波が直接届かないことが予想される「辺地共聴」の対策である。