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 今までの常識を打ち破る概念や,誰も思いも付かなかった新機軸なアイデア,今まで無かったユニークな視点と工夫…。一見退屈に思えるエンタープライズ(企業情報システム)関連ベンダーが開発/企画化する新製品や新サービス分野こそ,実はこうした刺激に満ち溢れた世界だと,記者は考えている。

 以下は,新製品/サービス記事の執筆を日常業務としている記者が,自身が執筆した過去記事の中から独断と偏見で選んだ「2008年における新機軸でユニークな製品サービス10傑」である。いずれも,自信を持って紹介できる製品サービスばかりである。

 2008年のベストは,何と言っても,米3teraのグリッドOS「AppLogic」だ(第1位: 関連記事)。AppLogicの世界では,画面上にアイコンによってWebサーバーやDBサーバーを仮想的/論理的に表現し,それらを線でつないでWebシステムを構築する。最高にサイバーでイカした,SF映画のような世界観である。

 番外編のベストとしては,製品化はされていないものの,前回の記者のつぶやきでも紹介したANOBARを推したい。ANOBARは,前回の表現をそのまま流用すると「視聴中のテレビ放送に文字情報を付加するインテリア」である。“字幕”を物体として具現化した新機軸とともに,テレビとの親和性の高さが,時代の雰囲気にマッチしている。

仮想化界隈は新機軸のるつぼ

 2位以降は甲乙付けがたいが,デスクトップ環境やクライアント・アプリケーションの世界に起こっている大変革には目が釘付けだ。例えば,米Symantecは米Altirisと米AppStreamの2社を買収して,ポータブル化とストリーミングという,クライアント・アプリケーション利用環境の仮想化における2つの新たな潮流をカバーしようとしている(第2位: 関連記事)。

 今回のコラムでは仮想化の潮流について深くは触れないが,仮想化におけるストリーミングでは米Citrix Systemsが,ポータブル化では米VMwareの取り組みが有名だ。例えば,VMwareが2008年末に発表した「VMware View 3」は,ポータブル化のほかに,VMware仮想マシン・イメージをクライアント機へと配信するという画期的な新機軸に取り組んでいる(関連記事)。

 VMware仮想マシン・イメージの配信というと,真っ先に連想する関連技術は,ネットブート型のシンクライアントだろう。実は,先述したVMware仮想マシン・イメージの配信と同様,ネットブート環境でローカル・ディスクへのデータをキャッシュする製品が存在する。米Citrix Systenmsのネットブート製品「Citrix Provisioning Server」(買収した米Ardence製品)のディスク・アクセスを,ローカル・ディスクでキャッシュする「ReadCacheシステム2.0 for Citrix Provisioning Server」である(第3位: 関連記事)。

価値に課金する驚愕のユーティリティ・コンピューティング

 4位として紹介したいのは,ネットワーク・アプライアンス分野に登場したユーティリティ・コンピューティングである。負荷分散装置の帯域を,ライセンス契約だけで,200Mビット/秒から4Gビット/秒まで,実に20倍ものレンジで売り分けるという「AppDirector ODS」だ(第4位: 関連記事)。装置に使うCPUなどのハードウエアは,どのライセンス契約であっても一切変わらない。

 繰り返して言うが,まったく同じハードウエアが,契約の違いだけで,200Mビット/秒にも4Gビット/秒にもなるのである。驚愕の製品企画としか言いようがない。十分な性能を提供しつつ,ライセンス契約で低いスループットに制限するということだ。部材の生産技術における歩留まりの問題ではなく,単なるマーケティング戦術上の意識的なリミッターの問題なのだ。技術を安売りするのではなく,価値に対してお金を支払う,という意味で,成熟した消費スタイルを具現化している。

 料金体系つながりで言えば,前回の記者の眼で触れたサイバートラストの商品企画も至高である(第5位: 関連記事)。有効期限3年のディジタル証明書を,あたかも有効期限1年モノと同じように,1年ごとの利用料ベースで買えるようにしたものだ。3年以内での途中解約も可能だ。アイデアの凄さで言えば,右に出る企画はそうはないと思う。