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 第8回では,レイヤー2ネットワークでの装置の冗長化について紹介しました。今回は経路の冗長化を実現するリング・プロトコルについて紹介します。

スパニング・ツリーは障害時の経路切り替えに時間がかかる

 イーサネットLAN(レイヤー2ネットワーク)の冗長性を確保するプロトコルとして,一般的には,IEEE802.1dとして標準化されているスパニング・ツリー・プロトコル(STP)が知られています。

 スパニング・ツリー・プロトコルは,スイッチ間でBPDU(bridge protocol data unit)と呼ばれる制御フレームをスイッチ間で交換し,その制御フレーム上に搭載されているブリッジ識別子やパス・コストといったパラメータ情報を基に経路の計算を実施します(図1)。これにより,メッシュ・トポロジやリング・トポロジといったネットワーク・トポロジに依存せず,仮にループ構成が存在していた場合にも,論理的にループ構成のない(ループを排除した)ネットワークを構築した上で,ネットワークの冗長性を確保します。

図1
図1●スパニング・ツリー・プロトコルのしくみ
各リンクの「パス・コスト」を判断基準として,ルート・ブリッジを基点とする ツリー状のネットワークを構成する。メッシュ状にLANスイッチを相互接続した 複雑な構成のLANでも,スパニング・ツリーを利用すると,ループのないネット ワークを構成できる。

 しかし,スパニング・ツリーは通信経路の決定論理が複雑であるため,ネットワークが大規模になればなるほど,障害発生時に通信経路を確定するための経路計算に時間がかかり,通信の復旧が遅くなってしまうという欠点があります。

 そのため,より耐障害性の高いネットワークを提供できるプロトコルが期待されています。そうしたプロトコルの一つとして注目されているのが,「リング・プロトコル」と呼ばれるレイヤー2冗長プロトコルです。

リング・プロトコルとは

 リング・プロトコルは,それぞれのスイッチ・ベンダーが独自の仕様で実装しているのが現状です。標準化されている技術もありますが,スパニング・ツリー・プロトコルと異なり,各社の機器に広く搭載されているわけではありません。ここでは,アラクサラネットワークスが自社のLANスイッチに実装しているリング・プロトコルをベースにお話をしていきます。

 リング・プロトコルは,LANスイッチをリング状に接続したネットワークで使われるレイヤー2ネットワークの冗長化プロトコルです。特別な制御フレームを使ってリング状のネットワークの状態を監視し,障害や障害復旧などの状態の変化を検出すると,通信経路を切り替えるという機能を実現します。スパニング・ツリーと異なり,ネットワーク・トポロジをリング・トポロジに限定することで,動作をシンプルにすることが可能となり,障害発生あるいは障害復旧に伴う通信経路の切り替え/切り戻しの収束時間を短くできます。また,リング・トポロジのLANだけを対象とすることで,メッシュ・トポロジを採用した冗長化ネットワークよりも使うインタフェース・ポートや経路/ケーブルの必要量が少なくて済むというコスト面での利点もあります。

 リング・プロトコルは,ビル内やキャンパス・ネットワークのバックボーンLANとして利用することを想定しています(図2)。ビル内であれば,各フロアにLANスイッチを置き,その間をリング状のネットワークで結ぶことで,冗長構成のLANを構築できます。キャンパスLANであれば,ビル間をリング状に接続して,冗長構成のあるネットワークを構築するといった具合になります。

図2
図2●リング・プロトコルの適用例
経路の一部に障害が発生しても迅速にバックアップ経路へ切り替えることが可能 になる。