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 2004年3月から2006年3月まで,2年間にわたって雑誌「日経ITプロフェッショナル」に連載した「プロマネ失敗学」が単行本になった(書名は「プロマネ失敗学 あなたを成功に導く14事例の教訓」)。著者はコンサルティング会社,クロスリンク・コンサルティングの拜原正人社長だ。

 記者が拜原社長と初めて出会ったのは,今から6年前の2003年春。クロスリンク・コンサルティングの設立発表会の場だった。この発表会で,同社が危機プロジェクト支援を柱とするコンサルティング会社であることやそのための方法論も整備していることを初めて知ったのだが,まだ危機プロジェクト支援のコンサルティング自体が珍しかったたこともあり,同社のビジネスモデルは,記者に強い印象を残した。

 その半年後,連載執筆を打診するために,記者は再び拜原社長を訪れた。日経ITプロフェッショナルで連載していた「プロジェクトマネジメントの理論と実践」が2004年2月号で終了することが決まったため,プロマネに関する新しい連載の筆者を見つける必要があったのだ。連載の筆者として真っ先に記者の頭に浮かんだのが,拜原社長だった。

 改めて話を伺うと,既に危機プロジェクトを支援した実績は多数あり,各プロジェクトの危機要因や解決方法もすべて記録しているという。これを聞いた記者は「その事例を連載で順番に書きましょう」「危機事例は絶対に読まれます」と,「忙しい」と渋る拝原社長を半ば強引に説得。なんとか連載執筆を引き受けてもらった。こうして生まれたのが,2004年3月に始まった連載「プロマネ失敗学」である。この連載は,2006年3月まで2年間続き,記者が思ったとおり読者の好評を得た。

 「プロマネ失敗学 あなたを成功に導く14事例の教訓」は,この連載に対して大幅に加筆・修正を加えたものである。サブタイトルにもあるように,14のシステム開発プロジェクトの危機要因(拜原社長の言い方ではドミナント・アイテム)と,危機からどうやって脱出したのかを生々しく描いている。

 事例だけではなく,プロジェクトマネジメントの本質やリスク・マネジメントのコツ,プロジェクトで気をつけなければならない危機要因など,拜原社長が若いプロジェクト・マネジャーに伝えたいエッセンスをコンパクトに詰め込んだ章(第5部)もある。特に「必ずプロジェクト全体の俯瞰図を描け」という教えは,非常に重要だ。

 「プロマネ失敗学」がITプロフェッショナル読者の評価を得たのは,匿名ではあるが,すべてが実話に基づいているため,連載に“リアリティ”があったからだと思う。成功プロジェクトではなく,危機プロジェクトの事例をこれだけ多く書ける人は,あまりいないのではないだろうか。

 もう一つ,連載を担当していて感じたのは,ベテラン・プロマネのノウハウをなんとか若い世代に伝えたい(世代間のギャップを埋めたい)という拜原社長の情熱だ。拜原社長は現在,SEC(ソフトウェア・エンジニアリング・センター)の「プロジェクトの見える化部会」でも活躍しており,若手プロジェクト・マネジャーの育成にも力を入れている。システム開発プロジェクトの質を上げたい,優秀なプロジェクト・マネジャーを育てたいという情熱は,今も健在である。

 「プロマネ失敗学 あなたを成功に導く14事例の教訓」は,汎用機時代にいくつもの修羅場をくぐり抜けてきたベテラン・プロマネである拜原氏が,「若いプロジェクト・マネジャーに宛てた手紙」のような気もする。ぜひ,多くの若いプロジェクト・マネジャーに読んでほしいと思う。