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 多数の携帯電話からセンサー情報を集めて解析すれば,個別のユーザーの行動だけでなく,社会全体としての人の動きが見える。

 GPS情報の軌跡を解析して,特定の場所の混雑度合いや全体としての人の流れを見るといったものだ。例えば,電車の線路上に絞ってユーザーの軌跡を調べれば,電車のリアルタイムの運行状況を取得できる。自動車の流れを観測したければ,道路上のユーザーの動きを調べればいい。

 こうした大局的な解析情報は,最終的には個別のユーザーのサービスの向上につながる。例えば,「詳細な電車の運行状況を加味した経路検索を提供する」,「災害の際に効率的に避難ルートを指示する」,「人気スポットの混雑状況から効率のいいデート・コースを作る」といったサービスが考えられる。

外部のカメラが情報を補う

 端末が取得したセンサー情報に,ユーザーを外部から観察できるカメラなどのセンサー情報を連携させれば,さらにサービスの質や幅は広がる。

 例えば,ウィルコムはWILLCOM CORE(次世代PHS)の基地局工事の際に,ネットワークにつながる多目的なカメラや温度計,降雨計などを併せて設置することを考えている。狙いは映像やセンサー情報を提供するプラットフォームを作り上げ,これを使ってサービス提供事業者から収入を得ることだ。街に設置されたセンサーを使えば,携帯電話だけでは取得できない外部からの“目”が手に入る。

 典型例は,ユーザーが道に迷った場合だ。外部からは,地図を見ながらキョロキョロしているという動作を見て,迷ったことを推測できるが,携帯電話のセンサーでは,立ち止まっていることは検知できても,迷った状態まで判断するのは難しい。

 将来,街角のカメラで人の動きを解析すれば,こうした動作を検知できる。実際,「カメラの映像から,人が目で見て判断するのと同程度の精度で迷っていると思われる人を探せる」(国際電気通信基礎技術研究所(ATR)知能ロボティクス研究所ネットワークロボット研究室の篠沢一彦主任研究員)という。

 降雨センサーを使えば,都市部で夏に発生する「ゲリラ豪雨」を観察できる。ゲリラ豪雨は局地的に大量の降雨がある一方で,それ以外の部分は晴天という特徴がある。降雨センサーで状況を検知し,解析すれば,どこで雨が降っているか,いつごろ止みそうかが分かる。これを使って,ユーザーに「喫茶店で待ちませんか」といった提案ができる。

生活全般を携帯がアシスト

 携帯電話と外部センサーがユーザーとその周囲を観察し,これらの情報にこれまで蓄積してきたデータや外部コンテンツを連携させ,サーバー側で次の行動を推測するようになると,朝起きてから寝るまで,携帯電話がユーザーをサポートするようになるかもしれない(図1)。

図1●行動支援サービスの例
図1●行動支援サービスの例
現在の状況と次の動きを予測して,サービスを提供する。

 これまで述べてきた例のほかにも,「朝,出勤するまでに必要な時間を逆算し,その時間になっても寝ていれば,目覚まし時計を鳴らす」,「約束の時間に遅れそうなら,先方に連絡を取るように勧める」,「冷蔵庫に残っていそうなものを考慮して,夕飯の献立を一緒に考えてくれる」といったサービスが考えられる。

 この世界の実現に向かって,携帯電話事業者が第一歩を踏み出した。