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 携帯電話が“秘書”となってユーザーをサポートする──。

 こうした新サービスを実現するには,大きく三つの要素をうまく組み合わせる必要がある。(1)携帯電話から収集されるユーザーの趣味・嗜好および行動パターンを解析するための元となるデータ,(2)情報を持つ外部のコンテンツ事業者のデータ,(3)これらを仲立ちし,情報を配信する推測エンジンである。

 (1)のユーザーの趣味や嗜好を解析するカギとなる情報は多様である。携帯電話で収集できる情報だけでも,メール,Webの閲覧履歴,取得したクーポン券,映像,音楽,端末の設定,購買情報など様々だ。一方,行動パターンを知るためのデータとしては,GPSや加速度センサー,ボタンの操作などの情報が考えられる。さらに,趣味・嗜好ではなく,血圧や体重,心拍数など健康にかかわる情報も携帯電話から収集できれば,新しいサービスにつながる。

 (2)のコンテンツ事業者のデータとしては,広告,イベント,交通情報,店舗,友人の情報などが考えられる。

 この(1)と(2)を仲立ちするのが,(3)の推測エンジンだ。ユーザーの趣味・嗜好と行動パターンを分析し,その結果に合致したコンテンツをユーザーに送る。ユーザーのメールやWeb閲覧を解析して,韓国映画のファンだと推定できれば,映画館に近づいたときに韓国映画の情報を配信するサービスが実現できる。

携帯電話事業者の三つの稼ぎどころ

 こうした仕組みは,携帯電話事業者にとってメリットが大きい(図1)。

図1●携帯電話事業者のビジネス・モデル<br>ユーザーからのサービス利用料が入るほか,コンテンツ事業者からの収入,プライバシ情報を取り除いた統計情報の販売収入が期待できる。
図1●携帯電話事業者のビジネス・モデル
ユーザーからのサービス利用料が入るほか,コンテンツ事業者からの収入,プライバシ情報を取り除いた統計情報の販売収入が期待できる。
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 まず,個別のユーザーに絞った情報を送ることで,ユーザーのサービスに対する満足度が高められる。しかも,使うほどフィードバックがかかり,推定の精度は向上する。その結果,ユーザーが通信事業者を替える可能性を低くできる。仮に通信事業者を変更すると,ユーザーは移行先のシステムに対して,改めて自分のことを学習させなければならないからだ。

 事業者はユーザー以外からの収入も期待できる。コンテンツ提供事業者からの手数料やプラットフォームの利用料収入などだ。米グーグルの「AdSense」のように,ユーザーの趣味・嗜好と状態に応じて,端末に広告を配信できればその対価として広告主から広告料を徴収するビジネスも可能になる。

 さらに,ユーザーから集めた情報を,個人を特定できない統計情報として,第三者に販売することも考えられる。例えば,駅から住宅街に向かってどの経路で帰る人が多いか,商業施設の各店舗での滞留時間はどのぐらいか,といった情報だ。都市計画を行うデベロッパや行政,チェーン店を展開する会社などに需要がありそうだ。

ドコモとKDDIはUI作りから着手

 とはいえ,秘書型サービスに使うために,携帯電話事業者がユーザーの趣味・嗜好にかかわる情報を見境なく集めるわけにはいかない。ユーザーが生活をのぞき見られている,と不安を感じる可能性があるからだ。「秘書型のサービスはユーザーに“携帯電話事業者が信用できない”と思われると成功しない」(NTT ドコモ コンシューマサービス部ネットサービス企画の前田義晃担当部長)。

 そこで,NTTドコモとKDDIが打ち出してきたのは,まずはユーザー・インタフェース(UI)を工夫して,端末が自分のパートナであるとの認識を持ってもらう戦略。当初はセンサー情報を集めず,プライベート情報の解析もしない。ユーザーのコンセンサスを得ながら徐々にセンサー情報やプライベートな情報を集め,推測エンジンを使ったサービスに移行していく。

 そんな新サービスがNTTドコモが2008年11月から提供を開始した「iコンシェル」(写真1)と,KDDIが2009年1月からベータ版として開始予定の『「感性型」エージェント・インタフェース』である(写真2)。どちらも,UIにマンガのようなキャラクタを用意。これを介してユーザーに情報を提供する。

写真1●NTTドコモの「iコンシェル」<br>キャラクタがユーザーの選択したコンテンツや予定に応じたメッセージを出す。
写真1●NTTドコモの「iコンシェル」
キャラクタがユーザーの選択したコンテンツや予定に応じたメッセージを出す。
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写真2●KDDIの「感性型」エージェント・インタフェース
写真2●KDDIの「感性型」エージェント・インタフェース
キャラクタを介すことで,ユーザーに複雑な操作をさせず携帯電話の機能を使ってもらうのが狙い。