.NET Frameworkは,すでに多くのWindowsアプリケーション開発者にとって標準的な開発プラットフォームになっている。2002年にMicrosoftがリリースしたVisual Studio .NET以降,Visual BasicやC#言語で開発したアプリケーションは.NET Frameworkなしには動作しない。ガーベジ・コレクタを備えた安全性の高いメモリー管理機構や,現在も拡張が続く豊富なクラスライブラリなど,多くのエンジニアが,アプリケーションを安全に実行する高機能なブラックボックスとして.NET Frameworkを利用しているはずだ。
本書は,.NET Frameworkというブラックボックスの中核にある「CLR(共通言語ランタイム)」の中身に迫るため,著者自身が各種のドキュメントに当たり,ときには.NET Frameworkの挙動を検証するなどしてまとめた力作だ。CLRの外形的な役割は標準規格「CLI(共通言語基盤)」として公開されているが,規格と実装の間には少なからぬ隔たりがある。技術的にかなり突っ込んだ内容になっているので,初心者が読みこなすには難しい。一方でこの種の情報を欲していたエンジニアには待望の書だろう。
The Root of .NET Framework
荒井 省三著
ソフトバンク クリエイティブ発行
2730円(税込)