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 本研究所では、日本と海外のIT技術およびその利用方法を比較し、両者の間にある情報格差について考えていく。第1回は、マッシュアップをテーマに日本と海外の情報格差について考察した。今回は、携帯電話市場から、技術とビジネスの関係に触れ、世界との情報格差についてもう少し考えていこうと思う。

 今回は、携帯電話をグローバルな目で見てみる。昨今、日本の携帯電話市場で話題になっているのが、米アップルのiPhoneと、米グーグルのAndroidである。まずは、両機種の特徴でもあるユーザーインタフェース、すなわちユーザーの使い勝手に注目してみよう。

 リッチインタフェースとしては、iPhoneの評価が高い。だが、これは本当にアップルにしか実現できない仕組みなのだろうか?Androidでも、iPhoneのようなインタフェースであれば、実現できるのではないか。

図1●AndroidのSDK(開発キット)を起動した画面の例
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 実際、AndroidのSDK(開発キット)をPCにダウンロードしてみると、PC上で開発できるアプリケーションを体験できる(図1)。デモを見る限りでは、Androidでも、iPhone同様のインタフェースが構築できる。ただAndroidのSDKは英語版しかなく、「日本語のSDKじゃないと不安」という方には、この時点で情報格差が生じてしまっているのだが。

 グーグルは、同社のビジネスモデルが広告を露出することだからということもあり、アップルと異なり、開発環境をできるだけWindowsのように開放していこうとしている。ここに、ビジネスプラットフォームとテクノロジの関係が見えてくる。
(1)アップルは、iPod&iPhoneのハードウエアとmusic&gameなどアプリケーション課金モデル
(2)グーグルは、広告と検索連動技術
(3)米マイクロソフトは、有償OS

 グーグルやアップルなど、もともと携帯電話業界とは関りがなかった企業が、携帯電話市場に少しずつ入り込んできた。これにより、ようやくユーザーにも携帯電話業界の特異性が認知され、業界に変化が生まれてきたわけだ。

テクノロジの選択が市場を制限する

 しかし、残念ながらここに日本企業は絡むことができていない。世界規模で製品を開発できないことが理由の一つだろう。例えば、大手携帯電話メーカーの富士通や、パナソニックが携帯電話を生産する場合、海外向けと国内向けで通信方式が違うため、二つの生産ラインが必要になる。従って、世界展開するメリットが薄い。

図2●携帯電話の新製品を動画で紹介するcnet tvの画面例
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 逆に、米モトローラやフィンランドのノキアは、日本市場への取り組みについて縮小を図っている。世界規模の売り上げからみれば、日本という市場はあまり魅力的ではないのかもしれない。例えば、モトローラが2008年夏に最新機種を発表した際、日本語のサイトでは、次のような記事「Motorola、音楽ケータイ「ROKR」3モデルを発表」がでた。しかし、英語サイトの一つ、cnet tvにおいては、その製品が動画で紹介されている(図2。Product videos のCell phones を選ぶと閲覧できる)。日本のサイトには、この動画へのリンクはない。日米間には、携帯電話情報一つをみても、これだけ大きな差があるのだ。

 世界で携帯電話を売る会社は、インターネットを効率よく、かつ効果的に使って世界に製品情報を配信している。新しい携帯電話が出れば、世界中の人がその情報を求め、英語サイトの商品紹介を見にくる。日本であればテレビコマーシャルの役割をWebサイトが担うわけだ。そこに、番組や商品紹介動画があれば、ユーザーはWebから直接、情報を入手できる。そして企業は、そのアクセスログから商品がどの程度露出し、どの程度評価されているのかをリアルタイムかつ直接的に知ることができるわけだ。

 世界中に商品をPRすることができる、このサイトで目立っているのは、モトローラやノキアのほか、韓国のLGとサムスン、台湾のHTCなどである。そこには、日本の携帯電話メーカーの姿はない。この状況を、みなさんはご存じだっただろうか?