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東京海上日動火災保険のCIOである横塚裕志常務取締役

 国内の損害保険最大手である東京海上日動火災保険は、2008年5月から代理店業務の抜本改革プロジェクトを実行に移している。新しい保険契約システムを稼働させ、現在は積極的な活用を代理店に働きかけているところだ。新システム導入の狙いは、複雑になり過ぎた保険商品の構造やラインナップとともに、保険契約業務や事務をできるだけ簡素化していくこと。これが顧客満足度の向上につながり、成熟しつつある保険市場でのシェア拡大の原動力になる。

 東京海上日動火災保険は、今回の新しい業務フローやシステムの開発に3年以上を費やしてきた。保険商品は、保障金額など保険の内容そのものは競合各社の間で大きくは違わない。それだけに、分かりやすい説明で大きな手間をかけずに契約できるなど、商品を提供するプロセスの良しあしに敏感に反応する顧客が多い。同社CIO(最高情報責任者)の横塚常務は、「IT(情報技術)の役割の中心はかつて、バックオフィス業務の効率化にあった。しかし今は、顧客との接点である代理店の業務プロセスを革新させることが会社の戦略の中心だ。この領域でITが果たすべき役割が増している」と語る。

 代理店向けの新システムを企画・開発する過程で、同社IT部門は「代理店視点」を重視した。支店や営業部門の社員と一緒に代理店に行って商談に同席したり、代理店の人が本店に来た時に同席させてもらったりしたのだ。例えば、代理店が使うパソコン画面のプロトタイプを作るためだけでも100店以上の代理店に足を運び、画面の使い勝手についての意見を丹念に聞き出した。従来の画面構成は保険契約業務を担う同社社員には使いやすかったが、代理店が使いやすいものではなかったという。

 横塚CIOは、「IT部門と事業部門が一緒に考えていかないと、代理店向けシステムをより良いものしていくのは難しい」と考える。そこで、IT部門の部員には、(1)業務を分析してフローチャートに落とし込んでから業務構造を再設計する力、(2)会社全体の業務の流れを考慮して最適な答えを見つける力、を磨くよう発破をかけている。この2点がIT部員の強みだからだ。横塚CIOはこのうち(2)に関しては、「檜(ひのき)風呂理論」をしっかり身につけてほしい、と独特の言い回しをする。

 檜風呂理論とは、運用を含めた仕事のやり方まで考慮して最適な業務プロセスを事業部門に提案すべき、との考え方だという。檜風呂の機能は素晴らしいが、毎朝掃除しないと腐ってしまうし、檜の香りは1年くらいで抜けてしまう。運用面まで考慮して本当に檜風呂が必要なのかどうか慎重に検討し、もしも何年も使い続けるならユニットバスに芳香剤を組み合わせて使ったほうがいいのではないか、と提案するよう教えている。

Profile of CIO

◆最近読んだお薦めの本
・『会社人間が会社をつぶす ワーク・ライフ・バランスの提案』(パク ジョアン・スックチャ著、朝日新聞社)
 ワークライフ・バランスの本質を書いた本でたいへん感銘を受けました。私生活を豊かにすることが、会社でいい仕事をすることにつながる、会社の仕事をしているだけではいい仕事ができない、という考え方が書かれていて、大きな衝撃を受けました

◆ストレス解消法
・ストレスを感じたら、もっとひどいことをイメージして、そこまでならなくてよかった、と思うとすっきりします。先日、海外で女房がスリに財布を盗まれたのですが、パスポートは無事だったので、パスポートまで盗られなくてよかったと思ったら、いい土産話になりました。