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 2008年11月12日、2007年度の温暖化ガス排出量の速報値が発表された。柏崎刈羽原発の停止などで、電力量当たりのCO2排出量が増加し、排出量を押し上げた。原発頼みの温暖化対策の構図が改めて浮き彫りになった。

 2007年度の温暖化ガスの総排出量は13億7100万t(CO2換算)で、基準年(CO2は90年度)比で8.7%増となった。排出量が増えた最大の要因は、原子力発電所のトラブルにある。2007年7月の新潟県中越沖地震で東京電力の柏崎刈羽原発の7基が停止し、火力発電で補っている(国内の原発は 55基)。ほかの原発も含め、稼働率の低下で3100万tのCO2が発生した。これは、2006年度からの総排出量の増分に等しい。

 2007年度の日本全体の原発の稼働率は60.7%。これが過去最高だった1998年度の84.7%だったと仮定すると、2007年度の総排出量は13 億800万t(基準年比3.7%増)に激減する。日本の温暖化対策は、原発に極度に依存していることが、改めて浮き彫りになった。

日本の温暖化対策は、原発に極度に依存していることが、改めて浮き彫りになった
日本の温暖化対策は、原発に極度に依存していることが、改めて浮き彫りになった

排出枠の費用は利用者が負担

 京都議定書の目標達成の成否は、電力10社で作る電気事業連合会の自主行動計画にかかっている。各業界が策定する温暖化対策の自主行動計画、とりわけ電力業界と鉄鋼業界の計画は、政府との事実上の協定となっている。電事連は、2008~12年度の平均で使用電力量1kWh当たりのCO2排出量を90年度比で20%「程度」減らす。しかし2007年度は、逆に8.6%増となった。

 非化石エネルギーの利用や設備の改善を進めても達成が難しいため、電力各社は2012年度までに合計1億9000万t分の排出枠を調達する契約を済ませている(2008年9月時点)。京都議定書のCDM(クリーン開発メカニズム)の排出枠は1t当たり約3000円。痛い出費だ。

 とりわけ東京電力は、柏崎刈羽原発の停止によって年間約3000万tのCO2が余計に出る。これを排出枠で相殺しようとすると、新たに年間1000億円程度かかることになる。

 原発の復旧の時期は依然不透明だ。東京電力は他社同様、現時点で保有する排出枠の総量を明らかにしていないが、原発の停止が長引けば、2012年度までに用意すべき排出枠は、1社単独で1億tに迫る恐れもある。排出枠の購入費用を電力料金に転嫁せざるを得ない情勢だ。

 自主行動計画を守るために排出枠を購入して政府に譲渡すると、発電原価への算入が認められるため、購入費用を電力料金に含めて利用者に請求できるようになる。東京電力は排出枠の譲渡の時期や量は、今後検討するとしている。経済産業省は譲渡を急ぐよう電力各社に求める方針だ。原発停止によるCO2増は、電気利用者の負担で補うことになる。

 原子力は温暖化政策の重要な位置を占めているが、停止した際のリスクも極めて大きいことが実証された。電力料金に上乗せして消費者がコスト負担すべき対策が、排出枠なのか、太陽電池など分散型の自然エネルギーなのか、改めて議論すべきだ。