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 「日本の国際競争力低下」と「少子高齢化」による人財不足という問題にいかに立ち向かうべきか。日立システムアンドサービスは,企業知の形成と知の循環の仕掛けを作る「知財戦略」と才能を開花させる場を作る「人財戦略」の2本柱で,この状況に対応しようとしている。講演では,同社の人と知をつなぐ施策の背景,「人財・知財創成システム」と全社コラボレーション基盤による知の循環の仕掛け,才能を開花させる場を作る「オープンソース・リクルーティング」の狙いを紹介した。

日立システムアンドサービス 執行役専務 眞木 正喜 氏
日立システムアンドサービス 執行役専務 眞木 正喜 氏

 世界経済フォーラムによれば,日本の競争力は2006年の5位から2008年には8位へと低下している。また,IT調査会社ガートナーによれば,日本企業のIT投資意欲は先進16カ国中で最低だという。ところが,少子高齢化や団塊世代の一斉退職によって,国内での人的資源の確保はますます困難になろうとしている。その一方,インド,中国はIT人財の規模を急速に拡大している。 ITサービス会社がこうした状況に対応していくには,日本にある“知財”と“人財”のより効果的な活用が重要になる。

 日立システムアンドサービス執行役専務の眞木正喜氏は,それを実現させる2つの方策を考えている。「1つは“知”を活かすための知財戦略,もう1つは“場”を作るための人財戦略です。知財戦略では,企業知の形成と知の循環の仕掛け作りのために『人財・知財創成システム』を構築しています。人財戦略においては,才能を開花させる場の提供と多様性のある職場と仕事による価値創造,ワークプレイスのグローバル化のための『オープンソース・リクルーティング』も1つの手段として俎上にのぼっています」。

 同社は2002年に人財開発戦略を構築し,人財に関する取り組みをスタートさせている。さらに2004年から2005年上期にかけて組織単位でのパフォーマンス分析を行い,2005年下期から2006年にはパフォーマンスの高い人財の洗い出しも行った。その結果,全社員の数%がハイパフォーマーと判明。彼らの活動を分析すると,人脈が果たす重要性などがつかめた。そこで,会社が保有する知財と人とをつなぐ,新しい価値を生み出す仕掛け作りに着手。これは,ハイパフォーマーを育てる仕組みでもある。

人財・知財創成システムでハイパフォーマーを支援

 これまで日立システムアンドサービスでは,業務ノウハウ・ドキュメント,プロジェクト情報,人財情報,顧客情報,売上・損益情報など,事業活動で必要となる情報・ナレッジ群は個別のシステムに分散して存在しており,各システムは連携されていなかった。

 ところが,散在するこれらの経営資源を整理・体系化し,関連付けて探索したいというニーズが強まってきた。関連付けて眺めることで,新しい気づきや発見の促進が可能になるほか,知識の体系化によって企業知の形成が期待できるからだ。

 こうしたニーズに応えるために同社は,ハイパフォーマーを支える知のネットワークである人財・知財創成システムを構築し,それを利用した活動を2008年5月にスタートさせた。同システムは,基幹系とは別に情報系を束ね,Webベースの「場」である企業内クラウドを基盤とし,経営資源を整理・体系化してつなぎ,それらを関連付けて検索できるようにしたもの。これにより,技術者らは人(Know Who),プロセス( Know How ),コンテンツ( Know What)の3つのアプローチで,手がける事業の関連情報を探索し,ハイパフォーマーのような事業活動の展開を可能にする。

 「Know WhoやKnow Howのプロセス,新しい事業のネタ探しなどのプロセスでは,見つけたい情報があらかじめわかったうえでの検索ではなく,様々な情報の中から新しいものや本質を発見する探索の仕掛けが重要なのです。システムは2008年に稼働を始めたばかりですが,そうした非定型なプロセスを経ながら,新しい価値を創造するような知的活動に最適な方法だと評価しています」(眞木氏)。

オープンソース・リクルーティングで才能を開花させる場を提供

 人財・知財創成システムと並行して進めているのが,全社コラボレーション基盤の構築だ。これは,SNS/ブログ機能を活用した,組織や職位,地域の壁を越えたコミュニケーション・コラボレーションの基盤で,全社レベルでの人的ネットワーク構築の推進と情報・知識の共有により,伝えあう文化を醸成する。招待制・実名制で運用しており,現在は全社員の半数以上が参加し,約300のコミュニティが形成されているという。

 このようにして同社では,人財・知財創成システムでハイパフォーマーの知を抽出し,コラボレーション基盤(社内SNS)で組織をまたいだノウハウやナレッジ,思いを共有し,それらを循環させて使いやすいかたちで全社に展開していく考えである()。

図●知の循環の仕掛け構築
図●知の循環の仕掛け構築
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 一方,オープンソース・リクルーティングも取り組みの1つとして検討を深めている。背景にあるのは,日本人のみの採用がだんだん困難になる一方,多様な人財による変革が求められること。グローバル拠点の展開やダイナミックなビジネスモデルの転換を支える人財確保が,必要になってきたこともある。そのため,新卒中心の日本式と経験者中心の欧米式を融合させた人財採用とし,多様性を確保したビジネスのグローバル展開を図る。

 その一環として,「実践的なITサービス技術の理解を深めてもらうことにより,即戦力を養成するために,複数の大学にIT関連技術の講義支援を行うことも考えていき,学生の中からハイパフォーマーな人財を見つけ,育成していきたい」(眞木氏)。

 社員のフリーエージェント宣言と起業を支援するための,スポンサード・エンジェル・ファンドも視野に入れている。「社員にセミオープンなコラボレーション基盤を提供し,一度退職しても会社に戻れるようにするのに加えて,緩やかなネットワークで協力関係を保持できるようにします。さらに家庭に入った女性の戦略化にも道筋を付けたい」と眞木氏は人財育成に意欲を見せる。