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 システム開発についての契約を漫然と結んでいる企業にとって、厳しい時代が訪れている。最近、このことを強く感じる。

 システムの開発を口約束だけで依頼したり、請け負ったりすることは少ないだろう。正式に開発をスタートさせるために契約は不可欠だ。ユーザー、ベンダーを問わず、契約が下手な企業は前提や条件が不明確なまま、システム開発プロジェクトを進めていくことになる。

不完全なひな型に頼っていないか

 「そんなことはない。当社は適切な契約を結んでシステムを開発している」。こう考える方が多いかもしれない。

 では、御社が普段利用しているシステム開発契約について思い起こしてもらいたい。個別のシステム開発案件や対象になる業務の内容に応じて、契約の内容が適切かどうか確認しているだろうか。法律の専門家が内容の確認に参加しているだろうか。用意されているひな型を漫然と流用しようと考えるケースが多いのではないか。

 システムを発注する企業、開発する企業、開発期間、開発費用、開発するシステムの仕様、ユーザーとベンダーの役割分担、さらには完成しなかった場合の対処策---。これらについて、最終的な判断のより所となるのは契約である。用意しているひな型で、すべての場合に対応できると考えるのは無理がある。筆者はこう考えている。

 このことを強く意識したのは、2008年11月に発行した「システム構築トラブルを回避するためのITシステム契約 締結の手順とポイント」という書籍を編集したときである。この書籍のサブタイトルは「経済産業省『情報システム・モデル取引・契約書<追補版>』」解説書」。経産省が2008年に策定した「モデル取引・契約書<追補版>」の使用法を中心に、システム開発契約に当たって有用と思われる情報を追加して作成したものだ。

 役所が作ったひな型と思われるかもしれないが、内容は想像以上に充実している。基本契約書に加えて、業務の内容に応じた11種類の個別契約書、さらに個別契約書で確定すべき各項目に記入していくだけで細かく規定できるシートを用意している。

 以前にも何度かシステム開発の契約書の実物を見たことはあったが、ここまで細かな点は規定していなかった。契約書だけでなく、ユーザーやベンダーが契約する際に確認しておけば役に立つだろう項目をまとめたチェックリストまで含まれている。

 モデル取引・契約書<追補版>を自分でも詳しく読み込んでいくなかで、ユーザーやベンダーの契約書、あるいは契約の交わし方にはまだまだ改善の余地があるのではないか、と感じたのである。

不況下で余裕のないプロジェクトが増える

 書籍を編集するに当たり、モデル取引・契約書<追補版>の策定作業に関係した数人に会い、詳細な契約書が必要な理由を聞く機会があった。このことも契約の重要性を再確認した大きなきっかけとなっている。

 契約の対象となるプロジェクトには、前提や条件が不明確でトラブルの種になりそうな問題が含まれているケースが少なくない。契約を交わす作業のなかで、こうした問題をあぶり出し、可能な限り潰していく。これが11種類の個別契約書を用意して、詳細に契約の内容を吟味していく理由だというのだ。

 このことを聞いて、目からうろこが落ちる思いがした。恥ずかしい話だが、筆者はこれまで契約について、問題が起こってから無用のトラブルを拡大しないように責任分担を明らかにすることが狙いだと考えていた。

 使いようによっては、契約はトラブルを防ぐために有効な手段なのである。ちなみに書籍のために今回会った人たちは、それぞれ立場は異なるものの、全員がシステム開発を巡るトラブルをとにかく減らしたいという強い情熱を抱いていた。

 不況が訪れるなか、契約を適切に結ぶ必要性は確実に高まっている。不況下では、余裕のないプロジェクトが増える。しかも、ユーザーとベンダーの思惑の差は大きい。ユーザーはIT投資の削減を進める一方で、システムに対して高い要求をベンダーに突きつける。ベンダーは業績確保のためにリスクのある案件を受注せざるをえない半面、できるだけ手間をかけずにシステムを開発しようとする。

 こうした厳しい条件のなかで進めるプロジェクトでは、トラブルが起こる確率が高まる。こんな時代だからこそ、少なくとも自分の会社がどういった体制で、どう契約を結んでいるかを再確認する意味があるはずだ。

 日経ソリューションビジネスでは3月5日に、「ITシステム契約 締結の手順とポイント」の出版を記念したセミナー「ITシステム契約締結のポイントと事例から学ぶトラブルの実態」を開催する。このセミナーでは「モデル取引・契約書<追補版>」の使い方のポイントに加え、システム開発・契約に関連してどういったトラブルが起こるのか、さらにITシステム契約の巡る最新の動向についても解説する。参加者からの質問にお答えする時間もたっぷりと用意している。

 必ずお役に立つ内容になっていると思うので、よろしければぜひ、ご参加ください。お申し込みはこちらです。