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 鉄鋼メーカーは1960年ごろからシステム化に取り組み,現在では膨大な既存IT資産を保有している。20年以上使い続けているシステムも決して珍しくない。こうした状況の中で,いかに持続的な成長を支えるITを構築するか。そんな難問に住友金属工業は取り組んできた。現実解と考えられるのはシステムのリフォームである。既存資産を生かしつつ,手直しを加えて環境変化に対応するというアプローチだ。そのための課題とは何か?そして,ITベンダーに求められているものとは? これまでの経験を踏まえ,IT業界に対する要望と期待を挙げる。

住友金属工業 情報システム部 参与 三原 裕二 氏
住友金属工業 情報システム部 参与 三原 裕二 氏

 鉄鋼業におけるシステム化の動きは1960年ごろから始まった。そのテーマは省力化から省エネ,付加価値の追求というように時代とともに変化してきた。「現在では,持続的成長が大きなテーマになっています」と,住友金属工業情報システム部の三原裕二氏は語る。

 長い歴史と多くのIT資産を保有する鉄鋼会社にとって,持続的な成長を支えるITとはどのようなものか――。それが三原氏の問題意識である。

 「当社の持つホスト系の情報システムの規模はトータルで1億ステップ,プログラム本数は12万にも上ります。そして,その半数以上が21年以前に開発されました。古いシステムだからダメということはありませんが,古ければどこかに手直しの必要がある場合も多いものです」。

 古くなった既存システムには様々な課題がある。システム機能の重複や保守対象の増加,システム構造の複雑化などだ。技術伝承が途絶えてシステムの中身が見えなくなっている場合もある。こうした悩みを一気に解決することは難しい。

 「仮に1本100万円の予算で12万本のプログラムをリフレッシュすれば,全部で1200億円です。それはほとんど不可能であり,膨大なIT資産を使っている当社にとっての現実解は,既存システムのリフォームというアプローチだと考えています」と三原氏はいう。

 日本情報システム・ユーザー協会の調査によると,基幹業務システムのライフスサイクルは全業界平均で13.6年(2008年調査)。同じアプローチが有効な企業は,住友金属だけではないだろう。

ITリフォームの必要性をいかに見える化するか

 「リフォーム」とは,既存のものを生かしながら状況に合わせて作り変えること。「主要な構造を残したまま建築物を新しくできるように,ITにおいてもリフォームという考え方ができるはず」と三原氏。そのための課題は,「いかにリフォームの必要性を“見えるように”するかということ」だと話す。

 必要性がわからなければ,経営者はそこに投資しようとは思わない。とはいえ,投資対効果を数値化することは困難だ。

 「詳細な現状分析は時間とコストの点から難しい。まずは,利用状況や改修頻度,維持コストなどの概況指標を用いた見える化を進めるべきでしょう」と三原氏は考えている。

 そして三原氏は,こうしたユーザー企業のアプローチに対するサポートをITベンダーに期待している。ただ,「実際には『最新ITありき』の提案,あるいは高尚な戦略を押しつけようとするITベンダーも少なくありません」と指摘する。

 「経営戦略という高度100メートルの視線からの提案,あるいは現場分析という高度5メートルの視線からの提案はたびたび受けるのですが,それをつなぐ中間視点の提案が少ないように思います。戦略をいかに現場に落とし込み,実行するのか。この視点を意識しながら,ユーザー企業の組織能力に合った方法を提案していただければと思います」と三原氏。それはIT業界に対する苦言であるとともに,期待でもある。