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 本書は最先端の光ネットワーク技術を深く,幅広く,そして平易に紹介している。光ネットワークの分野でこの三拍子がそろった解説書は,なかなかお目にかかれない。その意味で強く推薦したい書籍である。

 前書きによると,主な対象読者は上級のネットワーク技術者,管理者,通信コンサルタントだという。しかし,コアからアクセスまで広がった光ネットワークが通信事業を支えている今,通信分野に関わる人は,この書籍にある内容は把握しておくべきだろう。ただ惜しむらくは1万2000円という高い値段である。こうした値段は部数が見込めない専門書なので仕方のないことかもしれない。個人で所有して好きなときに眺めるという読み方を勧めるが,予算が許さない場合には,部署で1冊購入して回し読みするのもよいかもしれない。

 この書籍を際立たせているのは,内容が無味乾燥な技術解説の列挙にとどまらず,著者の通信事業に関する豊富な知識と深い考察が技術の説明に有機的に結びついていることである。

 例えば,第2章(光ネットワーク技術の種類)の冒頭で,インターネット・バブルにおける長距離伝送システムの過剰容量の原因について興味深い話を書いている。独占通信事業者だった米AT&Tが分割された際,光ネットワークのトラフィックや構造に関する情報がほかの通信事業者に渡されなかったというのだ。競争環境下ではそうした情報が通信事業者の機密として扱われるのは一般的である。だが,そのせいで光ネットワークに関する全米あるいは全世界の単一の情報源が失われ,伝送容量の予測を誤って過剰投資を招いたという。そこから著者は現状での帯域の需要と供給の論を進め,さらに個別の技術解説へと移っていく。

 もう一つ例を挙げると,第5章(通信事業者のネットワーク)では,光ネットワーク技術の解説書であるにもかかわらず,過剰な光技術礼賛を戒めている。現在の通信事業では,IP接続でコア・ルーターの設備投資を支払えず,転送ネットワークの帯域卸売りではDWDM装置のコストが賄えない。多くの通信事業者は,その理由を光技術の未熟さに求め,「OEO」(光信号をいったん電気に変換する処理)を排除して「OOO」(光信号だけで受動接続する処理)を導入することが答えだとした。しかし著者は,確かに光スイッチや多重装置でコストを削減できるが,システム全体では結局高くつくことを指摘する。

 この書籍の原題は「Optical Networking Best Practices Handbook」で,技術ハンドブックという扱いになっている。単に技術情報を得るのにも十分役立つが,それを読む度に現在の通信事業に関する新しい知見が得られるだろう。

光ネットワークの活用技術

光ネットワークの活用技術
ジョン・R・バッカ著
オーム社発行
12600円(税込)