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 2006年,良品計画はビジネスの基幹を担うMD(マーチャンダイジング)システムを刷新した。従来はITベンダーへの依存度が高かったが,このプロジェクトでは主要部分を内製化し,環境変化に柔軟かつ迅速に対応できるMDシステムを目指した。プロジェクトは短期間のうちにカットオーバーを迎え,システム開発・運用のコストは大幅に削減された。また,プロジェクトを通じてIT部門も力をつけ,「自分たちが業務を変革する」との意識が高まっているという。

良品計画 執行役員情報システム担当部長 兼 流通推進担当管掌 小森 孝 氏
良品計画 執行役員情報システム担当部長 兼 流通推進担当管掌 小森 孝 氏

 「無印良品」ブランドで知られる良品計画は,長い間システムの開発・運用をITベンダーに委託してきた。ただ,そうした体制を続ける中で,ビジネス上の課題も浮上していたという。同社執行役員の小森孝氏はこう説明する。

 「システムが縦割りで,変化に機敏に対応できない。あるいは,開発や運用の品質・コストの妥当性が不透明だったり,増え続けるITコストといった課題がありました。また,システムの処理能力も限界に近づいていました」。

 こうした課題を乗り越えるべく,良品計画は2005年2月にシステム再構築プロジェクトをスタートした。その検討段階で小森氏は,従来のやり方についていくつかの疑問を感じたという。「IT化の目的が曖昧で,経営とITがうまくつながっていないのではないかと思いました。また,ITベンダーへの依存度が大きすぎるという懸念もありました」(小森氏)。

 そこで,!)戦略の明確化,!)システムの優先度による割り切り(すべてに100%を求めない),!)IT部門が本質的な要件定義力を持つ,!)自社がリスクテイクするという4つの基本方針を定めた。そして,同社にとって最も重要なMDシステムの刷新にあたって,その開発を内製化することを決定した。

 「当社にとって最も重要なMDの業務プロセスと,それを支えるITは競争力を左右します。環境変化に柔軟かつ迅速に対応して,MDシステムも変化しなければなりません。このような要求に最も機敏に対応できるのは自社の社員です」(小森氏)。

初めはIT部門に不安の声も小さな成功で自信をつけた

 内製化といっても,すべてを自社でまかなうわけではない。機敏さや柔軟性が求められる管理系と,確実さや安定性が重要な実行系にMDシステムを切り分け,前者を内製化,後者をITベンダーに任せることにした。当初は,IT部門内にも「本当に自分たちでできるだろうか」という不安の声もあったようだ。しかし,小さな成功を積み重ねることで自信をつけ,2006年12月に新MDシステムが稼働。以後,週に1本のペースで機能アップを続けているという。

 「短期間でカットオーバーできた理由のひとつは,コマンド言語だけでシステムを開発したことです。非常にシンプルな方法なので,技術習得が容易で可読性も高い。これは内製化に適した方法ではないかと思います」と小森氏。このほか,最初から完璧を狙わず,7割程度のレベルで試作して改善を繰り返すというスタイルを採用したことも,スピード開発に寄与したという。また,このプロジェクトを経験したことで,IT部門の意識も大きく変化したようだ。

 「IT部門の中で,自分たちが業務を変えるという意識が高まりました。また,業務部門との関係も変わりました。以前は『つくる側』と『使う側』という関係でしたが,今では互いに改善提案を出し合うようになりました」(小森氏)。

 これにより,システムの開発・運用にかかるコストも大きく削減された。ITベンダーとの関係についても,双方に良い意味での緊張感が生まれたという。もちろん,IT部門のスキルレベルも向上している。小森氏の考えるIT戦略の選択肢も広がったようだ。