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 携帯電話が国内に登場してから約20年がたつ。携帯電話やモバイル機器の利用者側にも変化の兆候が見え始めた。利用者の世代交代とは,小中学生のころからインターネットや携帯電話に触れてきた若者の社会への台頭である(図1)。ネットアクセスの手段として当初から携帯電話を利用してきた彼らこそ,将来の技術やサービスの方向性を示すはずだ。

図1●ケータイ文化で育った若者が社会の中心へ<br>博報堂の吉川氏ら専門家は,携帯電話に慣れ親しんだ新世代の若者は,モバイルに対する考え方が異なると指摘する。
図1●ケータイ文化で育った若者が社会の中心へ
博報堂の吉川氏ら専門家は,携帯電話に慣れ親しんだ新世代の若者は,モバイルに対する考え方が異なると指摘する。
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 若者のモバイル利用について研究している博報堂 生活総合研究所の吉川昌孝上席研究員は,1980年生まれ以降,つまり2009年時点で29才以下の若者について「多感なときに,携帯電話サービスが大きく広がった。その前の世代とはビジネスシーン上でも生活シーン上でも,モバイルの利用方法が大きく違う」と指摘する。

 そうした若者によるIT機器やモバイル機器の利用方法を分析すると「SNS上で友達のコメントに突っ込みを入れるなど,仲間とのコミュニケーションをゆったりと楽しむ」(吉川氏)。これに対して30才以上の世代では,仕事の効率化や,自分が欲しい情報を取得するなど明確な目的に対して使う傾向が強いという。

ライフログは若者にウケるか

 モバイルを後から取り入れた世代と,生まれ付いてから当たり前にモバイルがあった世代との違いを浮き彫りにした別の調査もある。ガートナー ジャパンは,小学生,中学生,高校生,大学生に意識調査を実施した。多くの学生が「一番大切なものは携帯電話」と答える一方,「社会人となったときには,モバイルをどう活用するのか」という問いに対して「今までと同じように使う,変わった使い方はしない,という具合で,クールに見ている。携帯の将来に大きな期待があるわけでもない」(リサーチ テクノロジ&サービス・プロバイダー 田崎堅志バイスプレジデント)。携帯は実用上で必要だが,空気のような当たり前の存在であり,新たなサービスや端末にも興味や関心を示さない傾向があるという。

 サービスや端末の代わりに,「若い世代は,人とつながることに価値を見出す。情報を互いに提供し合うことで何かが生まれることに期待する」(吉川氏)。同氏は,通信事業者が積極的なライフログのサービスが,若者にアピールできるかは疑問だと指摘する。「30才以上の世代が好む情報収集力を強化するに過ぎない」(同氏)。

 29才以下の世代は,小さいころから携帯電話を手にコミュニティを形成し,友人や知人との間にある空気を読み,つながり感を大事にしてきた(関連記事)。今後こうした世代が,携帯電話の原点である“コミュニケーション”の新しい用途を作り出していくことだろう。