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ロームが試作した新型LSIは、レジスタに不揮発性
を持たせて待機電力を7割削減できる
ロームが試作した新型LSIは、レジスタに不揮発性を持たせて待機電力を7割削減できる

 電子機器の消費電力を8割削減できる新型LSI(大規模集積回路)を2009年から量産化するとロームが発表。多くの半導体メーカーが挑戦したが、実用化できなかった「待機電力ゼロ」のLSIに成功した。

 従来、パソコンやゲーム機など身近なデジタル機器を使用する際、電源を消したり、入れたりするたびに長い時間待たされることがある。それは電源を切ると、記憶していた情報がすべて失われる「揮発性メモリー」という半導体記憶装置を使用しているからだ。この場合、「揮発性」とは、電流の供給をなくすと情報が消えてしまう性質を指す。例えば、パソコンは電源を切るたびに必要な情報をハードディスクに書き込んで記憶を残す形になっている。

 一方、「不揮発性メモリー」という半導体記憶装置がある。これは反対に、電源を切っても記憶を保持している「不揮発性」という特長を持つ。代表的なものがフラッシュメモリーで、パソコンやデジタルカメラのメモリーカードなどに使われる。

新技術のカギは強誘電体素子、スイッチを使う発想の転換

 ロームはもともとフラッシュメモリーを開発してきた経緯もあり、不揮発性メモリーにこだわっていた。今回の新型LSIでは、「強誘電体」という物質の素子が不揮発性のカギとなった。

図●強誘電体素子の仕組み
図●強誘電体素子の仕組み
注:分子式はPZT : Pb(Zr,Ti)O3

 CPU(中央演算処理装置)の中には演算途中のデータや動作状態を保持するため、レジスタと呼ばれる記憶素子がいくつか配置されている。従来のレジスタは揮発性のため、待機中も電気を流して記憶を保持させておく必要がある。新型LSIはレジスタに強誘電体素子を付加することで、不揮発性を持たせることに成功。待機中の電力を大幅に削減できた。

 強誘電体とは、電圧をかけなくてもプラスかマイナスに偏った状態で安定している物質で、チタンやジルコニウムが、鉛や酸素原子に囲まれた結晶構造をしている。一般的な物質は電源を切るとプラスやマイナスの偏りが消え、それによって記憶していた情報が失われてしまう。強誘電体ならば偏った状態のままであるため、次に電源を入れた時に情報を伝えられる。それが不揮発性を実現できる理由だ。

 強誘電体の可能性については、半導体メーカーや研究機関で長年研究されてきた。しかし、ただ強誘電体素子をレジスタに直結して付加するだけでは実用化に程遠かった。というのも、強誘電体素子にも常に電気が流れる構造だと、余計な電力負荷がかかって寿命が短くなったり、信号遅延につながっていたからだ。

 突破口となったのは、強誘電体素子をレジスタと並列に回路設計し、スイッチを介して必要な時だけつなげるという発想。そうすると、レジスタが処理を終えて待機し始める時と、待機状態から処理を始める時だけスイッチをつなげば、強誘電体素子に流れる電気は情報を出し入れする時だけで済む。

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