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 私はCIO(最高情報責任者)として、(1)社内の基幹業務システム、(2)小売りや飲食店関連の周辺システム、(3)CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)システム、(4)新製品の製造など技術開発部門──の4分野をグローバルに見ている。

 コカ・コーラ・グループは、200以上の国に約2800種類の飲料を販売している。工場は800以上あり、毎日、約15億杯の当社の飲料が消費されている。直営の「ボトラー」はインドや中国など22カ所に、フランチャイズのボトラーは300以上ある。ボトラーというのは、最終製品を製造する組織や会社を指し、コカ・コーラ自身は原液を製造して各ボトラーに提供している。だから、私が以前に勤めていた米ゼネラルEエレクトリック(GE)とは異なり、コカ・コーラのビジネスはボトラーに大変依存している。

 2002年にコカ・コーラに来た時、私の使命は「ボトラーと協力して、いかにして効果的なIT(情報技術)環境を作るか」ということだった。そこで、私はボトラーとともに「標準化」に力を入れ始めた。

関連数百社のビジネスとITの標準化に着手

ジャン-ミシェル・R・エイレス氏
ジャン-ミシェル・R・エイレス氏
1886年に米ジョージア州アトランタの薬局で販売されたのが、炭酸飲料「コカ・コーラ」の始まり。1888年に法人化された。炭酸飲料、果汁飲料で世界最大手。「コカ・コーラ」「スプライト」など450ブランドを提供している。従業員数は7万1000人。2007年の売上高は280億ドルで、純利益は59億ドル。

 フランチャイズ・ボトラーには、30年前に作られたアプリケーション「ベーシズ」が入っていたが、もっと現代の需要に沿うものが必要で、「プログラムEスケール」と呼ぶアプリケーションの導入を目指した。ビジネス戦略を徹底させ、標準化したアプリケーションによるシナジー効果を得るために、「IT評議会」を立ち上げ、トップ12社のボトラーのCIOとともに、年に2~3回会議を開いてきた。各ボトラーは、独自システムの上にアプリケーションを走らせている。しかし、いわゆる「コカ・コーラEシステム」とでもいうような、コカ・コーラとボトラーが一体となって使えるようなIT環境を作り上げていかなくてはならない。

 「プログラム・スケール」の中で最も重要なのは、販売・流通のアプリケーションだ。ボトラーにとっては、顧客はスーパーマーケットやレストラン、コンビニエンスストア、競技場など異なる形態がある。個々の顧客に合った、適正な価格、卸のタイミング、パッケージングなど、消費者が最も注意して見ている点を正しく判定するには、正しい情報が必要だ。そこで、「成功モデル」を流通形態ごとに作り、ボトラーはそれに沿った製品の提供を目指す。さらにボトラーから独立した調査チームを作り、小売りやレストランを回ってアセスメントをするようにした。

 この結果、例えばある地域のコカ・コーラ幹部やボトラーが、顧客別のソリューションをパソコン上の地図で見分けられるようになった。在庫や価格、パッケージングなど異なる項目で、どこの顧客への製品供給がうまくいっているのか、いないのか、マッピングで一目瞭然となる。

 こうしたデータを積み重ね、ベストな製品供給をするためのデータベースを構築し、よりグローバルに使えるようにアップグレードし続けている。この数カ月以内には中国とオーストラリアで始める予定で、このアプリケーションのグローバルな導入が終わるのは2009年だ。

 複数年かかるITプロジェクトを成功させる鍵は、「小さく始める」ことだ。コカ・コーラのビジネスの規模を考えると、何かを導入する際に、常にいくつかのモデルに対応することを考えなくてはならない。しかし、モデルの想定が間違っていたら、大変なことになる。だから、小さく始めて、小さな成功を積み重ね、徐々に拡大していくことが重要だ。マーケットは、先進国、新興勢力、発展途上国とさまざまなので、少しずつモデルを積み重ねていき、フィードバックを繰り返すのだ。

 同時に、経営陣やプロジェクトにかかわるスタッフが、われわれが現在どこにいて、何を目指し、どちらの方角に向かっているのかについて、常に明確に示し合うことも大切である。

 また、小売りやレストランごとのデータを処理した際に、その過程を文書化しておくことを徹底させた。方法論的なところもあるが、データ処理の文書が残っていて、パスワードを使って常にアクセスできれば、ボトラーは特定の顧客にアプローチする際に、過去のデータとともにそれを裏づけする文書も読んで、戦略を考えることができる。

 コカ・コーラに来て、日々グローバルなチームプレーをするようになったことは、本当にうれしかった。しかし、ITこそが、社内のスタッフとボトラーをグローバルに結びつけ、ともに働くことを可能にしてくれるということをよく理解し、目の前の問題を解決し、ビジネス戦略につなげていかなければならない。

ジャン-ミシェル・R・エイレス氏
米コカ・コーラ上級副社長 兼 CIO
カナダ出身。モントリオールのマクギル大学で電気工学の修士号を取得。米マッキンゼーで通信E金融部門のコンサルタントを務めた後、1996年から米ゼネラルEエレクトリック(GE)に入社。2002年から米コカ・コーラ(正式社名は「ザ コカ・コーラ カンパニー」)のCIO。