PR

 クラウド・コンピューティングの本質について論考した一冊。著者は「ハーバード・ビジネス・レビュー」誌の上級編集者を務めた人物である。技術を経済学的視点で解説しているところが本書のポイントだ。

 本書で最も読ませるところは,大型発電所とクラウド・コンピュ.ティングの相似点について書かれた前半部分だ。大型発電所ができる前,製造関連の企業はエジソンが発明した発電機をそれぞれ所有して使っていた。エジソンの会社は発電機の販売・保守で利益を得ていたのだ。しかし,エジソンの部下は大型発電所を作り,そこから電力網経由で企業に電気を買ってもらうビジネス・モデルを思い立つ。この電力会社の登場で,各企業は自社で発電しなくてもよくなったのだ。

 大型発電所が電気を公共財にしたのと同様に,クラウド・コンピューティングがコンピューティング・パワーを公共財にするという著者の主張は,ネットワークの在り方や技術,企業戦略などについて考えさせられて面白い。

 本書の後半部分は,インターネットやいわゆるWeb2.0が社会に与える影響を悲観的に論じている。しかしこれらの内容はよくある“Web2.0本”にも書いてあることが多い。前半部分に比べてユニークさに欠ける上にまとまりがないのが残念だ。

クラウド化する世界

クラウド化する世界
ニコラス・G・カー著
村上 彩訳
翔泳社発行
2100円(税込)