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写真1●米chumby Industries社のCEOであるSteve Tomlin氏
写真1●米chumby Industries社のCEOであるSteve Tomlin氏

 2009年1月に,米chumby Industries社のCEOであるSteve Tomlin氏(写真1)にインタビューを打診したところ快諾頂きました。Steve氏が語るchumbyのすべてを数回に分けてご紹介します。

高坂(悟郎,シリコンバレー在住のフリーライター) 初めまして。本日はお忙しい中,インタビューにご協力頂き,ありがとうございます。

 私は,発売当時からchumbyに興味があり,発売後すぐにchumbyを入手して自身のブログなどで紹介してきました。chumbyは多機能なため使い方は人それぞれです。さらに,仕様のほぼすべてが公開されているなど,さまざまな特徴を備えています。そのため,一口で説明するのが難しいデバイスですよね。ハイテクのデバイス好きなユーザーには,機器のスペックを説明するだけで理解してもらえますが,そうではない一般ユーザーにchumbyを説明するのにいつも苦労しています。そこで,改めてお伺いします。「chumbyとは一体なんですか?」

 Steve(Tomlin,米chumby Industries社のCEO) chumbyは,他の電子機器と違って全く新しい(コンセプトの)デバイスです。そのため,私自身も一口で説明するのにいつも苦労します。chumbyとは一体何かと問われたら,「chumbyは(単なる)ハードウエア・デバイスではない。サービスである」と説明しています。

 ユーザーが興味を持つ情報だけをインターネット上から簡単に収集し,常に最新の情報を提供するサービスです。提供する情報は,天気予報でも,スポーツの試合結果でも,あなたの友人がアップロードした画像や動画,ゲーム,なんでも構いません。一般のPCのように,使うたびにブラウザやアプリケーションを立ち上げて各サービスにアクセスするのではなく,壁掛け時計のようにいつでも気軽に最新情報にアクセスできる,それがchumbyの提供する「サービス」です。

高坂 なるほど。単なるハードウエア・デバイスとしてではなく,サービスとして説明した方が分かりやすいですね。そのサービスを享受するための端末がchumbyなのですね。

斬新なデザインで大手ベンダーに対抗

 chumbyは,見た目がとても可愛らしく,一見しただけではその機能や性能の凄さを感じさせず,ある意味アンマッチな印象さえ与えます。これも,「chumbyはサービスである」というマーケティング戦略に沿っているのでしょうか。

 Steve そうですね。初めてchumbyを見た人が「コレはなんだろう?」という興味を惹くデザインにしたいと思いました。そして,複雑でとっつきにくい印象はできるだけ与えないように注意しました。

 世の中には既に,本体が黒や銀色に光り,ボタンがたくさん付いているハイテクな“おもちゃ”がたくさんありますからね。「それらの1つ」にはなりたくなかったのです。

 さらに私たちは,ソニーやAppleなどと違ってマーケティング活動に莫大な予算を割く事ができません。一目見ただけで,ユーザーが興味を持ち,話題になるようなデザインに注力しました。加えて,生活の一部に溶け込みやすいデザインになるように気をつけました。

高坂 皮革で覆われ柔らかい本体は,まさに「ファッションとテクノロジ」の融合ですね。

既存デバイス+chumbyで新たな価値を創造

高坂 (米国の)発売開始から約1年が経ちましたが,開発時にターゲットとしていたユーザー層と,実際にchumbyを購入したユーザー層とで違いはありましたか。chumbyは開発当初から,技術に疎いユーザー層もターゲットとして考えていたということでしょうか

 Steve 正直なところ,開発段階ではターゲットとするユーザー層は明確に決まっていませんでした。年齢や職業と言った特定のユーザー層(demographics)に絞り込むのではなく,ライフスタイルや価値観(psychographics)でユーザー層を分類したとき,技術そのものより技術がもたらす情報の価値を重視する人がターゲットになると考えました。

 繰り返しになりますが,我々の目的は,chumbyというハードを売る事ではなく,chumbyがもたらすサービスを提供する事です。すなわち,ビデオやオーディオ,ゲームなどのインターネット上のマルチメディア・コンテンツを,一般のPCだけでなくすべての家電製品のモニターでアクセスできるようにしたい,というのが我々のゴールなのです。

 例えば,先日開催された「CES」(Consumer Electronics Show:アメリカ最大の家電展示会)では,「デジタル・フォトフレームにchumbyの技術を組み込んだら何ができるか」という例を発表しました(写真2)。この例のように,既存の家電製品にchumbyの技術を加えることを「chumby powered experience」と我々呼んでいます。

写真2●既存のデジタル・フォトフレームにchumbyの技術を搭載した例
写真2●既存のデジタル・フォトフレームにchumbyの技術を搭載した例

 従来のデジタル・フォトフレームは,メモリー・カードに保存した同じ写真を繰り返し表示することしかできませんでした。そこにchumbyのマジック(技術)を加えることにより,ネット上のフォト・シェアリング・サービスとマッシュアップしたり,LAN上の他のパソコンの写真を表示したりできるようになるのです。

 我々が1年前にchumbyで提示した新しいサービスが,まさに今,多くの既存デバイスに新しい可能性を提供しているのです。