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 富士通と米IBMが繰り広げたメインフレーム用ソフトを巡る紛争を,当事者中の当事者である富士通の交渉担当者自身が描いた小説。前作『雲を掴め』で和解したのもつかの間,IBMはソースコードの著作権を盾に富士通への攻撃を再開。最終的に米国当局による仲裁にまで,両社の紛争は発展していく。

 著者である主人公は,富士通技術部隊がIBM互換機開発を通して目指す「壮大な夢」を後押ししようと奮闘する。IBM互換機で顧客拡大を図る事業面の狙いもさることながら,主人公の思いは日本に確かなコンピュータ産業を興したいという「技術者の本懐」を遂げさせることだった。だからこそ「日本人にコンピュータを開発する能力などない」というIBM側の言葉に,最も憤りを感じたのだろう。

 しかしIBM互換ビジネスという「雲」を追い続けてつかんだと思ったその先には,すでにダウンサイジングやパソコンという新しい雲が現れていた。そして本書が刊行された今,時代はネットとサービスへと再び変わろうとしている。次世代とおぼしき名が「クラウド(雲)」なのは偶然か。ラストで明らかになる意外な“事実”の意味を実感するためにも,前作との通読をお薦めする。

雲の果てに

雲の果てに
伊集院 丈著
日本経済新聞出版社発行
1785円(税込)