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 契約書のひな型や契約書を締結するためのルールがあっても、順守されなければ意味がない。

 かつて日本IBMの法務・知的所有権担当の常務取締役を務めた高石義一弁護士は、「本来、契約のひな型とは変えることは許されないもののはずだ。営業担当者はときとして、契約することだけを優先して、ひな型をおろそかにしてしまう場合がある」と指摘する。

 契約の見直しを実施したソリューションプロバイダも「現場の担当者任せ、法務部門頼みはもう限界だ」と声をそろえる。問題を解決するために、見直しを先行している企業が採用した対策は研修活動の徹底と、契約管理の厳格化が一般的だ。

営業シーンに合わせた研修を実施

 研修活動で営業部門が主体となって独自の取り組みを実施しているのは、NTTデータである。NTTデータは2006年4月から、営業シーンに合わせて、契約にかかわるリスクがどこに潜んでいるかを学ばせる「リスク管理研修」を実施している(図4)。

図4●NTTデータは2006年から、営業シーン別に契約のリスクを説明する研修を開始
図4●NTTデータは2006年から、営業シーン別に契約のリスクを説明する研修を開始
基礎編と実例編に分けて実施。営業担当者だけでなくSEから営業に異動した人や2007年度以降に入社したSEにも、研修の受講を義務付けている

 営業シーンは、四つに分かれる。具体的には「初期折衝」「ビジネススキームの策定、提案、見積もり」「契約締結、受注」「アフターフォロー」である。

 例えば、「契約締結の段階ですべての条項を読んだか」、あるいは「提案などの商談段階で機能や性能について保証を求められた場合はどうするか」といった内容を教えていく。

 NTTデータの越智正昭営業企画部長は、「単にルールだけを教えても、自分の営業活動のどこで適用すべきか、担当者によって違いが出ていた」と語る。この問題を解決するために、実際の活動に照らし合わせた研修メニューを開発した。

 研修は、基礎編と実例編に分かれ、基礎編は全営業担当者の受講を義務付けている。営業へ職種変更したSEも対象である。さらに受講後3年間に、3回のテストを実施する。テストは、100点満点を取れるまで、受け続ける。

 越智営業企画部長は、「リスクを低減するのが営業の仕事。リスクを研修で把握できていなければ、実際の仕事に反映できるはずがない」と厳しい。

 日本システムウエア(NSW)は、法務部門が主体となる研修だが、1年に2回、開催することで現場への定着を図っている。営業担当者に、商談やシステム開発プロジェクトのどこに契約のリスクが潜んでいるのかを知らせることが目的である。

 NSWでは、事業部ごとに設置したPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)が受注確定前に実施する審議会で、契約に起因するリスクについて審査している。対象となるのはすべての案件で、契約に関するリスクを回避できるものだけ、受注できるようにした。