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 「大胆な経済政策」を掲げたバラク・オバマ第44代米大統領が就任宣誓をした4時間半後、米IBMが第4四半期(4Q)の決算を発表した。金融破綻直後の08年10~12月期の激的環境悪化を反映した業績は後述するとして、日程の一致が興味を引く。過去15年にわたるIBMの4Q決算発表日をひも解くと、20日過ぎが5回、15~19日が10回。17日が4回、18日が3回だ。今年は17、18日が土日、19日は故マーチン・ルーサー・キング牧師の生誕記念日で米株式市場が休みのため、消去法だと20日は妥当な線である。しかし、当初から20日と決め打ちしていたのではなかろうか、と筆者は読む。

 IBMは昨年末、オバマ大統領の政権移行チームに対し、「米政府がITインフラに300億ドル(1ドル=90円換算で2兆7000億円)投資すれば、94万9000人の新規雇用が創出可能」と提案した。IBMのサミュエル・パルミサーノCEO(最高経営責任者)が、「IBMは今後、新政権による景気拡大策のすべてにかかわりたい。その準備は既にできた」と語ったのが発端である。IBMはオバマ大統領を全面的に支え、「雇用だけではなく米国の復活・再生に大きく寄与する」という姿勢を印象づけるために20日を選んだのではないか。

 IBMの4Qの売り上げは、一部アナリストが予想した4.1%減の281億ドル(同2兆5290億円)を下回り、6.4%減の270億ドル(同2兆4300億円)になった。先に10~12月期の業績を発表した米インテルの23.2%減ほどではないが、印タタコンサルタンシーサービシズ(TCS)の0.0%減よりは景気後退の影響を受けている。しかし粗利益や税引前利益、純利益はアナリスト予測を上回った。純利益で見るとインテルの88.7%減、TCSの18.0%減とは対照的な12.0%増。予想を4億ドル上回った。

 地域別では、米州が2%増、欧州/中近東/アフリカが1%減、アジア太平洋が1%減、日本は10%減(為替変動の影響を除く)。産業別は製造が8%減、金融と流通が6%減、公共が1%減。中堅・中小企業は9%減少した。ビジネス別では、ハードが2期連続の20.2%減、サービスも4.0%減だった。ソフトは2.6%増えている(表1)。

表1●米IBM事業の四半期別成長率
表1●米IBM事業の四半期別成長率

 問題は、今回のマイナス成長がいつ回復するかだ。通信業者を中心に供給過剰を招いて、ITが初めて大幅に落ち込んだ01年の「ITバブル崩壊」と、金融危機による景気悪化で顧客がIT投資を絞る動きは、内容に異なる面はあるが、回復を占う手がかりにはなる。

 景気後退の影響でマイナス成長が現れる時期は、(1)ハードやサービスが早くソフトが若干遅れる、(2)マイナス成長(不況)の期間も企業によってさまざまだがハード中心企業が長く続いて、サービスは早めに回復する、というのがITバブル崩壊からの教訓だ(表2)。IBMとHP(ヒューレット・パッカード)の回復が他より早く、マイナス成長が短く済んだのは、両社が大型買収を実施したことが理由である。

表2 ●ITバブル期における売り上げ回復までの期間
表2 ●ITバブル期における売り上げ回復までの期間

 豊富な資金を抱えるIBMには企業買収で成長に回帰する手段が残されている(HPはEDSを昨秋買収)。ITインフラ投資と雇用創出が密接なだけに、IBMが買収の道を選択する場合、ITインフラ分野の企業を買収する可能性がある。