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プロジェクトを進めるにつれ,なかなか解決しない課題が山ほど出てくる。「この課題が解決しない原因は?」「なぜ?なぜ?なぜ?」を問い詰めていくと,プロジェクトの雰囲気を悪くしてしまうことがある。改善活動に必須の「なぜなぜ5回」も,プロジェクトでは問題に合わせた使い方をしなければならない。

松永幸大
マネジメントソリューションズ マネージャー 中小企業診断士


 問題を解決しようと「なぜ?なぜ?なぜ?」と問題を原因分析していくことは,いわゆるトヨタ式の「カイゼン」,QC(品質管理)サークル活動といった形で多くの企業・プロジェクトが実践しています。問題を解決する活動以外にも,企画書を上司に出す際に,「ここはなぜ? それはなぜ? どうして?」と繰り返し聞かれた経験がある方も多いと思います。「なぜ?なぜ?」を繰り返すことは,理屈が通っていなければならないビジネスの世界では「当たり前」に行われている習慣です。

 プロジェクトの現場でも「なぜ?なぜ?」が重要なのは同じです。例えば,進捗会議の場で多くの方が,下記のような場面に遭遇していると思います。

PMO(プロジェクトマネジメントオフィス):「画面設計の進捗が計画通りに進んでいないようです」

プロジェクトマネジャ:「それはまずいな。原因は何?」

チームリーダー:「当初想定していたよりも画面の難易度が高いために,思うように作業が進んでいません」

PMO:「当初想定していたよりも画面の難易度が高かった画面は,何画面あるのですか。それらは具体的に,どのように難易度が高かったのですか?」

チームリーダー:「数はすぐには分からないので,会議終了後に確認して,ご報告します…」

プロジェクトマネジャ:「ついでに,当初の画面難易度の見積もりとズレが生じている理由は何かな。現時点で作業に取りかかっていない画面でも,同じようなズレが発生するかもしれないよね?」

チームリーダー:「それについても,会議終了後に確認して,ご報告します…」

 この問題を深堀りしていく「当たり前」の行為は,それを解決しようと強く思うほど,徹底的に問題の原因を追求しようとします。「なぜ?を5回繰り返せ!」なんて号令をかけられている現場なら,とにかく「なぜ?」を5回繰り返してみるものです。多くの場合,こうした習慣が良い結果をもたらすことに異論はないでしょう。

原因追求型の「なぜ?」は人・組織からの反発を受けやすい

 しかし,問題にもいろいろな種類があります。物の製造に関する問題の改善やシステムの問題は,緻密に分析していくことで原因を潰すことができ,結果として問題が解決されることが多いでしょう。

 その一方で,プロジェクトでは物の製造やシステムの問題よりも,「人」「人のつながり」「組織」に関係する問題のほうが大きく横たわっています。そして,人・組織の問題は,「なぜ?」を繰り返すことで問題を突き止めれば解決できるほど単純ではありません。人や組織は,自分が悪いとされただけで反発心が生まれ,「自分が悪いのではなくて,××が悪い」と自己防衛してしまうケースが多々見られます。

 例えば,あなたのプロジェクトで「○○部の協力がうまく得られていない」といった問題が起こったとしましょう。原因追求型(問題志向)の「なぜ?」を連発すると,次のような状況に陥ることもあるのではないでしょうか。

PMO:「なぜ○○部の協力がうまく得られていないのですか?」

業務チームリーダー:「○○部のAさんの時間が取れないのです」

PMO:「なるほど。○○部のAさんの時間が取れないのはなぜですか?」

業務チームリーダー:「○○部の部長に支援の取り付けをしていますが,それが甘いからだと思います…」

PMO:「なぜ部長の支援の取り付けが甘いのですか?」

業務チームリーダー:「うちのチームのBさんの働きかけが足りないからだと思います……」

PMO:「それならBさんの働きかけを改善してもらえば解決しそうですね」

業務チームリーダー:「そうかもしれませんが,Bさんの担当でない領域のタスクも支援しなくてはならなくなったので,工数が取れていないんです。むしろ,悪いのはBさんではなくて『人が足りない』というプロジェクトの状態が原因だと思います。何とかしてください」

PMO:「そんなことを言っても,予算とスケジュールってものが…」

 上記の例の場合,予算やスケジュールの配分をマネジメントできれば解決できますが,会話の最後でプロジェクト全体の「人不足」の話にすり替えられてしまいました。こうなると堂々巡りで,「じゃあ,継続検討ってことで…」となりやすいものです。問題が解決しないばかりか,話がこじれ,いつまで経っても解決しない,という事態になる危険性もあります。

 さらにやっかいなのは,人間関係も悪化して,プロジェクトの雰囲気を悪化させてしまうことです。故障して止まった機械は黙って修理を待ちますが,人は「悪いのは,あなた」と言われてしまうと,「反発感情→人間関係の悪化→プロジェクトの雰囲気悪化」というように,悪感情がじわじわとプロジェクト全体に伝播しやすいものです。人間関係の悪化とプロジェクトの雰囲気悪化が起こると,生産性の低下はもとより,プロジェクト崩壊の一因になると言っても過言ではありません。

 こういった組織問題の原因を「なぜ?なぜ?」と分析していくと,その最小単位である「人」の問題に必然的に辿り着きます。それが軋轢(あつれき)を生む原因にもなります。

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