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 工事進行基準では,プロジェクトの進捗率を計測するため,完了までに発生する労務費や外注費を合計した総原価見通しの見積もりが重要になる。前述の通り,大半の企業が導入すると見込まれる原価比例法では,実際に発生した原価(実際原価)を総原価見通しで割って,進捗率を算出するからだ。

 この総原価見通しの見積もりに関して,企業として「第三者によるチェック体制を作ることが必要だ」と公認会計士の山田氏は指摘する。プロジェクト・マネージャが算出した総原価見通しは,その上長がチェックするだけでは不十分という。上長もプロジェクトに直接責任を持つ「当事者」と見なされ,当事者のチェックでは恣意性を排除できないと判断されるからだ。

 では,誰が第三者としてチェックするのか。NECネクサソリューションズでは,「SI改革室」というPMO(Project Management Office)が第三者として総原価見通しをチェックする。SI改革室は,契約金額が3000万円以上の全プロジェクトについて,受注時と開始時のほか,大幅な仕様変更や進捗の遅れなどで総原価見通しに影響が出たときに,プロジェクト・マネージャが改めて見積もった総原価見通しをチェックしている。工事進行基準の義務化後は,この体制を強化し「SI改革室による第三者チェックを最低でも月に1回実施する予定」(NECネクサソリューションズ 執行役員 兼 SI改革室長 川本俊男氏)という(図4)。

図4●総原価見通しに対する第三者チェック体制が必要に<br>NECネクサソリューションズでは,事業部内の上長に加えて,第三者としてPMOに当たるSI改革室と経理の担当者が総原価見通しをチェックする
図4●総原価見通しに対する第三者チェック体制が必要に
NECネクサソリューションズでは,事業部内の上長に加えて,第三者としてPMOに当たるSI改革室と経理の担当者が総原価見通しをチェックする
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 このNECネクサソリューションズのように,一般にPMOや品質保証部といった組織が第三者としてチェックするケースが多い。加えて,決算時やプロジェクト完了時の赤字が確実になって「損失引当金」を計上するときは,経理部門のチェックも入る(損失引当金については次ページの別掲記事を参照)。そうした上長や第三者によるチェックについては,体制を整えルールを定めるのに加えて,チェック結果を証跡として記録しておくことが必要だ。会計監査の際,会計監査人に報告するためである。会計監査人は,システム開発の専門性を持っていないケースが多い。そのため「自ら総原価見通しの妥当性を検証するよりも,企業内の第三者によるチェック体制が機能しているかどうかを見極めることに重点を置く」という公認会計士もいる。

WBSの標準化が必要に

 このような第三者チェックを実現するには,その体制やルールを整備するのに加えて,作業項目(ワーク・パッケージ)を定義したWBSの社内での標準化を進める必要がある。WBSは開発プロセスと表裏一体なので,標準化は簡単ではない。しかしWBSの作り方をプロジェクト・マネージャ一人ひとりに任せていると,第三者チェックが機能しなくなる危険性がある。

 住商情報システムは2007年度に,全社標準の開発プロセスを定義した上で,「基本設計」「詳細設計」といった大日程とそれをもう1段詳細にした中日程までの全社標準WBSを定めた。ただしパッケージ開発かスクラッチ開発かなど,プロジェクトによって開発プロセスが異なり,単一の標準を全社で適用するのは難しい。そこで事業部ごとに設置したPMOが,全社標準のWBSをカスタマイズした事業部標準を定め,それを各プロジェクトに適用させている。その上で,各プロジェクト・マネージャが見積もった総原価見通しを,事業部ごとのPMOと全社のPMOが2段階でチェックする体制だ。

 この取り組みは「もともと赤字プロジェクト撲滅のため進めてきたが,工事進行基準の義務化後もそのまま適用できると見ている」(技術グループ PMO統括部 部長 円城寺誠氏)という。