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エノテック・コンサルティングCEO
海部 美知 エノテック・コンサルティングCEO
海部 美知

 ネットの世界はすっかりSNS(social networking service)の時代。米国のSNSは,急速な普及という第一段階を終え,淘汰の時代を迎えた。ユーザーのログインIDやプロファイルといったユーザー情報を自社の陣営に囲い込む「陣取り合戦」の新しい局面を迎えているのである。

フェースブックの「囲い込み作戦」

 2008年12月に,SNS大手の米フェースブックは新サービス「Facebook Connect」を開始した。Facebookの情報を外部サイトと連携させる機能を提供する。この機能を外部サイトに組み込むと,フェースブックのIDとパスワードでログインできるようになる。

 米シックス・アパートなどが推進するOpenIDの仕組みと似ているが,最大の違いは,共有されるのがログイン情報だけでなく,フェースブックに登録されたユーザーの名前,顔写真,プロファイルなども含まれることだ。言わば「アフィリエート」(成果報酬型広告)のような関係で他サイトを取り込み,フェースブックの陣地を広げていこうという,新手の「囲い込み作戦」だ。

 得意な「オープンな業界標準」という切り口でフェースブックに対抗しようとしているのが米グーグルだ。上記のようなフェースブック独自の動きに対し,グーグルは同様の機能を業界標準で実現しようとするAPI群「OpenSocial」陣営のリーダーである。しかし,世界の有力SNSプレイヤーをそろえたこの陣営は,実質的にはほとんど有効な手を打てずにいる。

 このためグーグルは,自社傘下サービス同士でユーザーIDと関連付けられた様々な情報を流通させる「ID情報の流通」という面で,新しい取り組みを始めている。例えば「Google Group」で登録した写真やアカウント情報が,「Blogger」(グーグルのブログ公開ツール)で作成したブログのコメント欄に自動的に反映される。しかし,ユーザー自身が顔写真やプロファイルを登録する必要性があまり大きくないために,グーグル内でユーザー情報の蓄積がまだ少なく,「ID情報の流通」が便利と感じられるレベルになっていない。

 これに対し,フェースブックはもともと「実名・顔写真」の文化であり,ユーザーの情報登録が既に進んでいるため,ID情報の価値が高く,ユーザーの利便性も高い。

 このように,検索エンジンでは圧倒的トップのグーグルがSNSの分野ではフェースブックに遅れをとっている。

混沌の中で進む合従連衡

 大手2社がマス市場で「関ケ原の戦い」を繰り広げる中,その周辺では「局地戦」が繰り広げられている。特定ニッチを得意とするサービス事業者が,それぞれの得意分野でのユーザー情報をじわじわと取り込んでいくという戦いだ。

 多数のサービスが乱立して混沌状態の中,陣取りと合従連衡が進むSNS業界。ビジネス・モデルはまだ模索段階ながら,この先何かが生まれてきそうな予感がする。

海部美知(かいふ・みち)
エノテック・コンサルティングCEO
 NTTと米国の携帯電話ベンチャNextWaveを経て,1998年から通信・IT分野の経営コンサルティングを行っている。シリコン・バレー在住。
 いよいよオバマ大統領が就任した。人気だけでないしたたかさが感じられる。就任宣誓式では感涙を流す人も多く,こうした人々の「希望」が良い方向に回り出してほしいと願っている。テレコム業界としては,ブロードバンド政策が当面の焦点。何を打ち出してくるか楽しみである。