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山下淳一郎(やました じゅんいちろう)
株式会社アイ・エム・ジェイ 執行役員
Webマーケティングコンサルタント
山下淳一郎(やました じゅんいちろう) 1997年からインターネットに携わり,多くの大手企業のWebサイトを手がける。顧客視点に根ざされた彼の戦略立案は,多くのクライアントから高い評価を得ている。また,脳生理学理論を取り込んだ独自のマーケティングやWebサイトコーチングのセミナー講師としても活躍し,Web担当者が必要とするスキルをプログラムにした講座も手がけている。

 脳の話については第1回でも触れましたが,イノベーションは左脳と右脳の両方を必要とします。近代文明は,デカルト以来,因果関係と定量化を駆使する一方,その呪縛に囚われてきました。近代合理主義の時代は,知覚世界の存在を否定はしなくとも,進歩の助けとはならないとされてきました。その風潮のおかげで技術が急速に進歩したのも事実です。

 しかし,イノベーションは分析だけで行うことはできません。正確に言えば,アイディアを生み出すための論理的プロセスは存在しないということです。「いいものを作ればきっと認められる」というのはすでに大昔の神話で,そもそもイノベーションに対する社会のニーズは分析によって知り得ることはできません。

 イノベーションとは論理的な分析であることに間違いありませんが,知覚的な思考活動に重きを置かざるを得ません。イノベーションを行うには,自ら市場に出て,自らに問い,顧客の生の声を受け止める必要があります。

 1000件にのぼるイノベーションの事例を一つひとつ調べて分類していったある経営学者が,イノベーションに7つの視点があることを発見しました。これは,多くの人が既知のことであると思いますが,念のためにここで紹介しましょう。それらを成功しやすい順番に見ると,

1.予期せぬ成功と失敗
想定していなかった成功や失敗から学んでイノベーションのヒントを見つけるもの。(ポストイットは「失敗作の接着剤」から生まれた)

2.市場構造の変化
市場における産業構造の変化の機会または脅威を捉えイノベーションを起こす。(言うまでもなくインターネットの出現)

3.ギャップの存在
想定していた業績や市場に対する認識などにおいて,顧客ニーズや市場動向とギャップが存在することがわかった場合にそれをヒントにするもの。(TVが開発されたのは1926年,爆発的に売れたのは1959年の皇太子の結婚)

4.ニーズの存在
現在不足しているプロセスやスキル,ノウハウなどを充足することでイノベーションを果たすもの。

5.人口構造の変化
社会の年齢構成の変化,そこから生じる所得などの変化を捉え,イノベーションの機会とするもの。(高齢化社会で子供用品や教育事業の需要は低下傾向)

6.認識の変化
社会の価値観の変化を捉え,それを利用してイノベーションを起こすもの。(世界的に健康が低下したわけでもないのにサプリメントなどが売れ始める)

7.新しい知識の出現
研究開発などによって新しい技術が発見され,それを利用した革新的な製品やサービスを開発するもの。(いまは洗濯機にすらCPUが内蔵され利便性が飛躍的に高まった)

 これらイノベーションの視点は,市場の分析と技術の分析によってさらに詳しく知ることができます。しかし,左脳の出番はここまでです。ここから先,イノベーションを成功させるのは右脳です。顧客にとっての価値も,右脳の特性によって知覚することができ,商品化へのアプローチの仕方が, やがてそれを使うことになる人たちの行動や期待にマッチしているかを知覚によって得ることができます。

 仕事は,論理的な分析を得意とする人(左脳を多く使う傾向にある人),直感的な感覚に優れた人(右脳を多く使う傾向にある人)など,多彩な個性が集まったチームによって進んでいきます。社会は,発展を求めてやむことのない存在です。社会が発展するために,ますますこの両者が,強みを引き出し合うコミュニケーションを求めているのだと考えられます。

 人間のすばらしさは,強みと弱みを含めた多様性にあります。同時に,組織のすばらしさは,その多様な人間一人ひとりの強みを最大限に発揮させ,弱みを意味のないものにすることにあります。「イノベーション」の架け橋となるのが,コミュニケーションです。