PR

 Webというテクノロジを活用し幅広いセンシングを行なった前回とは打って変わり,今回は「本」という身近でアナログなものによって,特定の人と深い「共感」をはぐくむためのテクニックを紹介しよう。

共感するにも「Yes,But…」は必要

 そもそも共感するといっても,何でもかんでも「うんうん。そうだね!」で済むものではない。共感と迎合は違う。管理職には「Yes,But…」の姿勢が必要だ。表面的に話を合わせるのではなく,時には反発しながらも,お互いの本質を分かり合うのが本当の共感だろう。

 人と人,分かり合うには時間がかかる。特に,管理職とITエンジニアの間にある壁は思いのほか高い。何度も開発現場で苦楽を共にした間柄であれば本音で向き合えるが,一度もチームを組んでいないメンバーにはどうしても遠慮がちになってしまう。特に,自分のよく理解できない技術やビジョンを持っているメンバーに対しては,それがかえって迎合を生んだり,逆に強硬な態度で接したりしてしまう。

 このような「ぎこちない」関係が続く限りは,お互いに共感などできはしない。迎合でも敵対でもなく,「そうだね。でも…(本音)」とまで伝えることができて,初めて共感しているといえる。しかし,この「そうだね」と「(本音)」の距離を埋めるのが難しい。

 建前と本音のギャップを埋めるために,何かよい方法はないだろうか。

双方向の共感を目指す

 さらに,共感といっても,管理職からエンジニアという一方向だけではなく,エンジニアから管理職という逆方向も存在することを忘れてはいけない。ともすれば上司は,行動や気持ちを把握することで部下に共感しようとするが,逆に自分の行動や気持ちを把握してもらうことで,部下に共感してもらおうとする努力も必要だ。

 そのためには,面談や普段の何気ない会話の中で自分の思いをうまく伝えなくてはならないが,ともすれば「思い」ではなく「指示」を伝える結果に終わっていないだろうか。

 やりたいこと,やるべきことが見えている管理職ほど,自分の思いと部下の思いにギャップを感じて焦り,ついつい一方的に思いではなく細かな指示を伝えてしまい,かえって共感を得られなくなってしまう。

 双方向の共感を育むために,何かよい方法はないだろうか。

本のプレゼントで双方向の共感を育む

 建前と本音のギャップを埋め,じっくりと双方向の共感をはぐくむ方法の一つとして,私は「本のプレゼント」をお勧めする。IT技術者は知識を得るためによく本を読むし,それほど読まない人でも,「もっと読まなくては!」という意識は高い。

 もちろん,ただ買って渡すだけの半ば強制的な方法では効果がない。思いを伝え共感を生み出すためには,さらにもうひと手間が必要だ。ここから先,私自身の経験を振り返りながら説明していこう。

読みこんで,書きこんだ本を渡そう

 私自身,本をプレゼントされたことも,したこともある。私の場合,上司から「My Job Went To India オフショア時代のソフトウェア開発者サバイバルガイド」をプレゼントされたことが印象に残っている。ある日,「ほい!」と,読み終わった週刊誌のように軽く渡されたのだ。

 早速読み始めると,上司が気になったのであろうキーワードにはマークがされていた。鉛筆で丸印を書いてある。普通なら完全な中古品なのだが,私にとっては特別なヒントでもある。尊敬する上司だったこともあり,そこに込めたメッセージを読み取ろうと必死に内容を読みこんだ。そして読み終わったとき,上司の考えるエンジニア像の理想に共感することができたのだ。