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23年前の東洋エンジニアリング入社時から、同じ電卓を使い続けている
 どんな顧客の要求でも「無理です」とすぐ拒むことはない。交渉相手の立場や社内事情に思いを巡らせ、本当に求めているものは何かを読み解く。商談で飯田は、このことに全力を尽くす。「自分の要求を正確にSIerに伝えることができる顧客は少ない。本当に実現したいことを把握してもらえるように手助けするのが営業の役目だ」と、飯田は言い切る。

 この営業スタイルで飯田は頭角を現した。東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)に入社した2004年から、SAPのERP(統合基幹業務システム)ソフトの営業を担当。当時の中心顧客は製薬業だったが、電機メーカーや流通業者の大型案件を次々に飯田は受注。飯田が開拓した製薬以外の顧客は、B- EN-GのSAP関連事業を支える柱の一つに成長した。

 飯田が現在の営業スタイルにたどり着いたのは十数年前、B-EN-Gの親会社である東洋エンジニアリングで国際プラント事業を担当した時期だ。交渉相手はロシアやアラブの企業。日本や欧米では当然のビジネス常識が通用しない。要求の内容が朝と夜で180度変わることも日常茶飯事だった。「顧客の言葉を額面通り受け取っていたら、何年も受注できない」という現実を経験した。だからこそ「どうやって顧客の真意をつかむか」を重視するようになった。

 この経験はIT業界に飛び込んだ直後から役立った。医療機器大手を訪問した際、システム責任者の要望はあいまいで、システムの要件を示すことはほとんどなかった。飯田は「この人はシステムのことだけを考えているのではない。経営や業務の課題を解決したいのだ」と感じた。それから足繁く通い、顧客のビジョンをどう実現すべきか、何度も膝を突き合わせて話し合った。この活動は2年後、物流や会計を含むERPの大型受注につながった。

 極寒の大地や灼熱の砂漠で働いてきた飯田にとって、日本でのIT商談は「工夫すればまだまだ拡大できる」と映る。「どんなに厳しいことを要求してくる顧客でも、共通したビジネス常識に従って商談を進めることができる。これだけでもありがたい」と、飯田は話す。

=文中敬称略

飯田 士郎(いいだ しろう)
東洋ビジネスエンジニアリング
ソリューション事業本部 営業本部 第1営業部 部長
1963年、東京都生まれ。86年に横浜国立大学卒業後、東洋エンジニアリングで国際プラント事業の営業を担当。土木・設備のエンジニアリング会社に転じてODA(政府開発援助)ビジネスを経験した後、2004年に東洋ビジネスエンジニアリングに入社。以来、SAP製品の販売を手掛ける。週末は、家族とのテニスで汗を流す。