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 米Microsoftは2009年3月第1週,次期クライアントOS「Windows 7」でInternet Explorer(IE)8の削除機能を搭載する計画があることを認めた。この決定により,同社は欧州で予想されていた独占禁止法(独禁法)絡みの訴訟を事前に回避できるはずだ。全世界のWindows 7ユーザーは,あらゆる場面で自分の好きなWebブラウザを使えるようになる(現在のWindowsは,ユーザーがIEを使っていなくても,何らかのアプリケーションのインターネット・アクセス時にIEを起動することがある)。

 ところが,MicrosoftがWindowsから削除できるように決めた範囲はIEにとどまらない。Webブラウザだけでなく,Windows 7の様々なOS用コンポーネントが削除可能になる。削除できるコンポーネントは「Windows Vista」のときより増え,「Windows Media Player」「Windows Media Center」「Windows DVD Maker」「Windows Search」「Handwriting Recognition」「Windows Gadget Platform」「Fax and Scan」「XPS Viewer」(関連サービスも含む)が該当する(関連記事:Microsoft,Windows 7でIEのオン/オフをユーザーが設定可能にMicrosoft,Windows 7でEU独禁法対策の「IE削除機能」を試験)。

 この決定は,ユーザーの選択肢を増やすという点で素晴らしいニュースだ。ただし,同社が行った今回の発表はエンドユーザーだけが対象である。企業ユーザーやIT管理者がいるような環境については,全く言及していない。この削除機能は,同社最大の顧客である企業ユーザーでも使えるのだろうか。

企業で配布するWindowsイメージからも削除可能

 結論を言うと,同社は削除機能を企業ユーザーにも提供する。IE 8やWindows Media PlayerといったWindowsコンポーネントの削除機能は,これまでと同様の方法で利用可能だ。具体的には,同社から提供される既存のWindows配布ツールを使うと,Windowsの機能を設定するエンドユーザー向けアプレット「Windows Features」に入れるコンポーネントを取捨選択したうえで,Windows 7用インストール・イメージを作れる。エンドユーザーに使用を許可するコンポーネントは,グループ・ポリシーでも指定できる。Windows Media用コンポーネントを完全に含まない配布用Windows 7だって作れる。配布用バージョンがこのように設定されていれば,エンドユーザーがあとから削除済みコンポーネントを追加することはできない。

 不要なコンポーネントはすべて削除したくなるものだ。コンポーネントが少ないほどOSは攻撃されにくくなるし,適用しなければならない機能修正ホットフィックスやその他アップデートの数も減らせる。例えば,オフィスでパソコンを使っていてもWindows Media Playerはときどき必要になるだろうが,Media Centerまで要求されることはほとんどない。

 Windowsにおける機能の削除はWindows 7の速度や操作性にどのような影響を及ぼすだろうか。同社は,Windows Vistaからコンポーネント化に取り組み,OS用コード間の依存性排除を進めてきた。コンポーネント化の努力により,Windows 7は削除可能なコンポーネントが増えた。しかし,削除の意味を明確化しておく必要がある。IE 8などのWindows用コンポーネントを削除するという操作は,エンドユーザー向けアプリケーションを削除するという行為だ。たいていの場合,アプリケーションの動作に欠かせないAPIまでは削除しない。APIは,Windowsのあらゆるところで様々な用途に使われている。コンポーネント削除後のソフトウエア互換性は,APIが鍵を握る。例えば,下位層コンポーネント「MSHTML」などの互換性に左右されるサードパーティ製アプリケーションや,「Winsock」などがIE 8削除後も正常に動き続けるのは,APIが残っているからだ。こうして互換性が維持され,エンドユーザーやサポート担当者の操作性が改善する。

 一言で言えば,同社は適切な機能を採用するだけでなく,適切な方法で適切な機能を実装しようとしている。これは,同社が約束したもののWindows Vistaでは実現できなかった透明性そのものだ。ときおり同社が行う正しい対応は素晴らしい。