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 システム機能は,大きく「インプット」「プロセス」「アウトプット」に分けられる。インプットとは,データの発生源となる機能であり,業務担当者が日々の業務の中でシステムに対するオペレーションを最も多く行う部分だ。プロセスは,入力されたデータを加工する機能。処理量,処理速度,計算の正しさなどどれもシステムが得意とする分野であり,この部分を効率化するためにシステムを導入する,と言っても過言ではない。アウトプットは,システムの処理結果を出力する機能。エラーリスト,財務レポート,業務分析帳票など内容は多岐にわたる。

 システム要件を検討する際,これらのうちどこにまず着目するだろうか。もちろん,どれも大切な機能なのだから,多少の前後はあっても,どの機能も検討は必須である。しかし,実際にシステム要件定義を始めてみると,帳票の検討を後回しにしてしまうことが多い。

 「帳票は単に処理の最後に出てくるリスト」であり,「ERPにデータさえあれば出力するのは簡単だから,後で考えればよい」「ERP側ではなく,BI(ビジネス・インテリジェンス)ツール側で検討すればよい」という誤った思い込みに陥るからだ。帳票は,システムから見れば最終アウトプットだが,業務を回すためのインプットでもある。業務の前提となる帳票の検討を後回しにしてはいけない。

なぜ,後回しにしてはいけないのか

 後回しにするとどんな不都合があるのだろうか。以下のケースを基に考えてみよう。

 ERPパッケージ導入の案件に参画したコンサルタントのAさん。帳票については,毎回のプロトタイプシナリオの中で関係する帳票の標準機能を紹介していった。その際,業務担当者の反応も悪くなかったため,これなら帳票はアドオン開発せずにすみそうだと安心していた。

 帳票検討を始めたのは,プロトタイプ・フェーズも終わるころ。現行帳票とその項目を業務担当者に提示してもらった結果,標準機能では対応できない帳票・項目が多数あることが判明した。一つ一つの帳票の必要性を確認したが,どの帳票も業務で必要との回答があり,Aさんは項目のマッピング検討からやり直すことになった。その結果,スケジュールは遅延し,アドオン開発対象も膨れ上がることとなった。

 「ERPにデータさえあれば帳票に出力するのは簡単だろう」。このようにパッケージを過信している顧客も多いのではないだろうか。

 確かにデータは存在していても,プロトタイプ段階で十分に検討ができていないと,必要な形で集計できなかったり,分析しようとしたらデータが分散していたりして,必要な情報を得るのに時間や手間がかかることになる。その結果,ユーザー受入テストの段階や,最悪の場合は本番稼働後に問題が発覚し,「こんなはずではなかった」と慌てるはめになる。

 帳票検討はコンサルタントと顧客の業務担当者が協力して行うタスクであるが,コンサルタントは顧客をリードしていく必要がある。それでは,帳票検討をうまく進めるために,コンサルタントは帳票に関する何を早めに検討するようにリードすればよいのだろうか。

 細かい「見栄え」は,後回しにしてよい。ポイントは「ある業務を行うためにどういう情報が必要か」「その情報はどのデータから加工できるか」という2点である。

 最初のポイントである情報の必要性を検討する際に,顧客の業務担当者が注意すべきことがある。「ある業務を行うために」というときの「業務」は「現行業務」ではない,ということだ。

 現行業務のプロセスを前提とすると,現行帳票が「不要」とはなりにくい。なぜなら,業務を行っている担当者にとっては,「現行業務ではその帳票を使う」からだ。

 「アドオン削減のため,内部帳票はERPパッケージの標準帳票で対応」という全体方針は理解しているが,それがなくては業務が回らない――。このようなロジックに陥ってしまうと,どの帳票も「否」とはならず,「アドオンしてでも必要」と判定されるだろう。

 ERPを導入するということは,業務そのもののあり方,つまりプロセスも変わるはず。その新しい仕組みの中で何が必要か,今の帳票がないと何が困るかを十分議論する必要がある。こうして必要性を吟味してから,その情報をどう加工して出力するかを決めればよい。

変えられない業務,変えられる業務

 何が何でも標準機能を使うべき,と主張しているのではない。企業にとっての競争力となる情報を,見やすい形で,スピーディーに得たいというのは当然のこと。それが標準機能で満たされないのであればアドオンを検討するのも一つの方法だ。

 ただし,安易にアドオンに走るのではなく,アドオンしてでも必要な大切な業務か,標準に合わせて変えることが可能な業務かという視点で見極める必要がある。「なんでもかんでも今まで通り」に固執すると,アドオンが増えるばかり・・・となるだろう。そうならないためには,業務担当者だけではなく,全体をふかんできるメンバー(経営陣や外部からのコンサルタントなど)が検討に加わることも有効な方法だ。

システムからのアウトプットは,業務との接点

 帳票は,最終的に業務担当者が業務を遂行するために必要となる「業務とシステムとの接点」である。インプットやプロセスは,あくまでアウトプットのための手段であり,通過点である。業務の目的を理解せずにインプットやプロセスを検討しても,結局,使わないデータや冗長データが増えるだけである。

 システムからのアウトプットは業務との接点であることを理解し,機能要件の検討の最初の段階で,新業務プロセスをもとに帳票要件を押さえておくことが,失敗しないためのポイントである。