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 このところ,現実社会と携帯コンテンツを組み合わせた事業モデルへの注目が高まり始めている。携帯電話向けクーポンを配布するなどして実際の店舗にユーザーを誘導する活用形態,いわゆるCRM(顧客関係管理)だ。会員組織を運営する企業自身が携帯コンテンツ・プロバイダとなり,あるいは既存のコンテンツ・プロバイダと共同で,CRMに取り組む動きが顕著になってきた。これも,既存の携帯コンテンツの枠を超えた動きだ。

成功事例登場で関心が高まる店舗連携

 携帯サイトの構築支援を行うモバイルコマースの調査によると,国内の大手チェーン店展開企業766社のうち,携帯サイトを持っていない企業は368社と約半分を占めている(図1)。「携帯サイトをマルチキャリアで多数の端末に対応させるには,特別なノウハウがある。しかも,システム構築にかかる費用は,実験的な取り組みとしては許容範囲を超える額になる」(同社の飯野勝弘代表取締役)というのが,導入が進まない理由だった。

図1●携帯電話を活用した店舗への集客事例が増えている<br>大手チェーン店の携帯サイト保有率は高くないが,日本マクドナルドなど先進事例の取り組みを見て,集客のための手段として関心が増している。導入に至るには,費用対効果の向上が欠かせない。
図1●携帯電話を活用した店舗への集客事例が増えている
大手チェーン店の携帯サイト保有率は高くないが,日本マクドナルドなど先進事例の取り組みを見て,集客のための手段として関心が増している。導入に至るには,費用対効果の向上が欠かせない。
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 しかしここに来て,「全国に店舗展開する大手企業が販促やCRMを目的とした携帯電話サイトを構築する案件が増えている」(ある大手コンテンツ・プロバイダ)という。最近になって大手企業が成功例を示したことで,導入ペースが加速しているというのだ。

 すかいらーくが携帯電話による会員支援システムの導入を決断したのは,「業界では有名なマクドナルドの成功が大きかった」(システム導入ですかいらーくを支援したエンターモーションの島田大介代表取締役社長)という。日本マクドナルドは,NTTドコモとの合弁企業を設立するなどして携帯電話を活用したCRMに積極的に取り組んでおり,既にその会員数は1000万に達している。すかいらーくも,先行事例をみて決断したというわけだ。

 携帯活用のCRMといっても大小様々なノウハウがあり,これがコンテンツ・プロバイダに蓄積される。すかいらーくが提供するクーポン・サービス「オトクーポン」は,会員登録するとクーポンを取得でき,これを食事メニューの注文時や会計時に見せると値引きされるというもの(図1)。会員が知り合いにクチコミで伝えるきっかけを作るように,クーポン利用時には音を鳴らして周囲に気付かせる仕組みを採用している。

 「重要なことは,クーポン・サイトを作るだけでなく,店舗内で告知すること。ある程度の店舗数があるなら,このような原則を守れば成功する可能性が高い」(島田社長)。すかいらーくはサービス開始から半年で140万人超の会員を獲得しており,「マクドナルドの初期と比べて高い伸びを示している」(同)という。

海外展開の取り組みが再燃

 国内の携帯コンテンツ市場が急拡大した2000年以降,「次は海外」とばかり,多くのコンテンツ・プロバイダが海外市場を目指した。しかし,ほとんどが成功を収められず,撤退を余儀なくされている。

 国内の市場は競争が厳しい上,携帯電話の加入者もこれ以上増えそうにない。そこで海外を目指すのは当然だが,サミーネットワークスの井島プロデューサーは「必ずしも日本の成功モデルは通用しない」と自戒の念を込めて話す。

 同社は中国に進出したものの,2007年に撤退。中国当局の規制強化などの要因があったためだが,「海外企業は日本の携帯コンテンツを相当研究している。すでに日本のモデルがローカライズされていることが多く,先行メリットを生かそうと海外展開しても,後発になることすらある」と海外進出の難しさを分析している。