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 停滞している地熱発電所に新設の動きが浮上した。電源開発と三菱マテリアルは2009年度に本格調査を実施し、早ければ同年度内にも建設を決める可能性がある。決まれば1999年に運転を開始した八丈島以来だ。

図●電源開発と三菱マテリアルの地熱発電所の建設検討地
秋田県湯沢市の山葵沢地域と秋ノ宮地域。両社が既に運用している地熱発電所からも近距離にある

 今回、建設計画が浮上した秋田県湯沢町山葵沢・秋ノ宮地域は、いずれも新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が調査済みのエリアだ。山葵沢は1993~96年度、秋ノ宮は96~2001年度に調査し、有望な地下資源が確認されている。

 通常は、NEDOの調査を受託した企業が、調査終了後に事業化を検討する。ところが、山葵沢地域で検討していた同和鉱業が、地熱発電事業から撤退。秋ノ宮地域の日本重化学工業は会社更生法を申請し、担い手が不在となった。そこで昨年春にNEDOが改めて公募し、電源開発と三菱マテリアルが両地域の調査を再開した。

 NEDOの調査だけでは事業化の判断材料が足りないため、両社は2009年度に詳細な調査と大規模シミュレーションを実施する。発電容量やコストも詰め、「2009年度内にも事業化できるかを判断したい」(電源開発と三菱マテリアル)という。

 地熱発電は地下深く井戸を掘り、くみ上げた熱水と蒸気でタービンを回し発電する。火山大国の日本は、世界的に見ても地熱発電の適地が多い。産業技術総合研究所の調査によれば、潜在的な発電量は約2207万kWに上る。だが現在の発電量は、わずか53万kWにすぎない。99年に運転を開始した東京電力の八丈島地熱発電所を最後に建設は止まっている。

 停滞の理由は大きく3点ある。第1は、適地の多くが国立公園内で建設できないことだ。第2は温泉への影響を懸念する地元の反対、第3がコストである。数百億円の初期投資が必要な上、電力の販売価格が安い。地熱発電の主力技術の蒸気フラッシュ発電はRPS法(新エネルギー等電気利用法)の対象外で、通常の電源と同じく1kWh当たり数円でしか売れない。まさに三重苦の状況にある。

環境価値を売れば成り立つ?

写真●三菱マテリアルの大沼地熱発電所
写真●三菱マテリアルの大沼地熱発電所
出力は9500kWで、74年に稼働して以来、安定的に発電を続けている

 厳しい事業環境のなか、温暖化への意識の高まりが両社の背中を押した。電源開発設備企画部企画グループの森田健次リーダーは、「多少高くても環境価値のある電源を欲しいというニーズが顕在化しつつある」と説明する。ある関係者は、「グリーン電力として売れば、コストが合う目算が立ってきた」と明かす。

 グリーン電力を求める企業は、年々増加している。グリーン電力を販売する電力小売り(PPS)が登場し、グリーン電力証書の販売も好調だ。日本卸電力取引所(東京都港区)は、昨年11月からグリーン電力の取り扱いを開始した。グリーン電力は、電力自体の価格に環境価値分の価格が加算されるため、事業者は1kWh当たり20円前後の収入を期待できる。

 政策支援への期待感も高まっている。発電所の稼働までには、事業化の判断から最短でも7~8年を要する。三菱マテリアル地熱・電力事業センターの北尾浩治副部長は、「そのころRPS法を含めて政策が変わっている可能性もある」と期待を込める。実際、資源エネルギー庁は立地やコスト面の課題を洗い出している。一度は止まった地熱発電だが、世論と政策の後押しを受け、再び勢いを増す日が近付いている。