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by Gartner
アリー ヤング VP兼最上級アナリスト
足立 祐子 リサーチディレクター

 ここ数カ月間で世界経済の先行きは不透明感を増している。回復への道筋はなかなか見えない。

 こうした状況ではアウトソーシング市場の先行きもはっきりしない。悲観論者は「IT予算を削減したり契約内容を見直す企業が増える」とみてアウトソーシング市場の低迷を予測する。

 一方でアウトソーシング市場の拡大を予測する見方もある。楽観論者は「アウトソーシングが企業のコスト削減や競争力強化に役立つ」とその論拠を説明する。

 今後数カ月または数年のレンジで考えると、アウトソーシングによって短期的なコスト削減と長期的な業績向上を同時に成し遂げようとするのはいささか無理がある。だからといってコスト削減だけを目的としてアウトソーシングの落とし穴を理解しようと努力しない企業は、将来の業績向上を達成できない。

 ITコスト削減が最優先課題となる今後数年の間、アウトソーシングの際に気をつけるべき点をみてみよう。

 例えば最初にアウトソーシング契約を結ぶときは、コスト削減を目的として長期契約を締結してしまいがちだ。残念ながら低コストのITサービスにこだわるあまり、景気回復が始まったときの拡張や技術革新への備えがまったくない契約も散見される。こうした契約は顧客と事業者の両方にとって2年以内に悪い結果をもたらすとガートナ ーは考える。

 アウトソーシング戦略の立案や事業者の選定段階で手を抜くと、やはり失敗しやすい。こうした事態に陥らないためにはしっかりとしたアウトソーシング戦略を立て、ベンダーマネジメント能力を高めてから適切な投資をするしかない。

 複数の事業者を競合させて料金を引き下げようとする動きもある。特に標準化の進むITアウトソーシングでこの傾向は顕著である。

 しかし料金の安さだけで事業者を決めるようなアウトソーシング契約は1~2年後には失敗する可能性が高い。この種の契約ではアウトソーシング戦略やベンダーマネジメントの重要性は軽視されがちだ。そうなると事業者側も目先の売り上げを立てるため実際以上に安い見積もりを持ってくる。顧客企業は景気回復を視野に入れて長期的な拡張性を確保しつつ短期的なコスト削減目標を設定できるような関係を事業者との間で築くべきだろう。

 事業者の動向にも、しっかりと目を配っておくべきだ。2009年は事業者間の優勝劣敗が明確になるとガートナーはみている。アウトソーシングで安定的に売り上げを計上できる事業者が勢力を伸ばす。厳しい競争は今後も続き、M&A(合併・買収)が加速するだろう。準大手以下は成長を維持するために四苦八苦するはずだ。

 資金力が豊富な事業者にとって今は、高い技術力を持っていたり、特定の業種・地域で強みを持つライバルを買収し、将来の景気回復に備える時期である。

 また2009年は新興国のアウトソーシング事業者にとってチャンスだ。不透明な部分もあるが、中国やインドの事業者は今後も成長を続けるだろう。将来的にはインド企業が世界のトップ5入りを果たす可能性だってある。ブラジルやメキシコに代表される中南米諸国も早晩、アウトソーシング分野に参入してくる。

 景気後退が長引こうとも、アウトソーシングに戦略的な事業価値を求める動きは確実に広がる。アウトソーシングがビジネス目標と切り離せない以上、柔軟性がアウトソーシング戦略と契約のカギを握る。

 ビジネスサイクルの一環としてアウトソーシングをとらえないと成功はおぼつかない。景気後退期の最重要課題はコストだが、回復に転じたときに備えて目標を修正する準備だけはしておいたほうがよい。