
日立ライティング(東京都千代田区)は蛍光管を組み込んだ電球部品(発光体)と、点灯に必要な電子回路を組み込んだ口金部品に分離できる電球型蛍光灯「ぶんりくん」を開発、2008年10月から販売を始めた。
店頭では2つの部品をセットで買えるが、発光体だけでも買える。セットなら1500円程度だが発光体だけなら約500円だ。
発光体は1万時間で部品が消耗するなどして寿命を迎えるが、点灯回路は3万時間もつ。従来の一体型蛍光灯は、発光体の寿命に合わせてまだ使える点灯回路も捨てるしかないが、分離できれば発光体を買い替えて3つ使う間も、1つの点灯回路を再使用(リユース)できる。
1つの点灯回路には約2.5gの銅や約10gのプラスチックなどが使われ、製造時に16.9gのCO2を排出する。「蛍光灯の省エネ性に加え“省資源”と“ライフサイクル全体のCO2削減”という新しい価値を加えた」(マーケティング部の立川千春氏)
しかし、発光体と口金部分を分離するのは一筋縄ではいかなかった。
電球型蛍光灯が発光する仕組みはこうだ。電球に収まるように折りたたまれた蛍光管の両端に、マイナスとプラスの電極が組み込まれている。電流を流すと電極の温度が上り、電極に塗布されたバリウムなどで構成される「電子放射物質」が電子を放出する。電子がマイナス電極からプラス電極へ移動しながら蛍光管内の水銀とぶつかり、水銀から原子が飛び出す。この時、放射される紫外線が蛍光管内壁に塗布された発光体を照らして可視光が生じる。
放熱と分離、独自構造で両立 業界トップの素早い点灯
従来から蛍光灯で使われてきた液体水銀や、現在、主流になりつつある水銀合金は約40℃に近い環境で紫外線を放射しやすくなる。ところが、蛍光灯は点灯後、発光体内部の温度が次第に上がり、100~120℃と高温になる。100~120℃で紫外線を放射する水銀合金も使われるが、蛍光管内部が適温になるまで紫外線が放射されず、発光が遅くなる。
なかには低温対応型の水銀合金を使いながら、発光体の一部(「最冷点」と呼ばれる)を放熱させる独自の構造を開発した電球メーカーもある。球体の一部でも適温を保てば水銀原子が自然とそこに集まり、十分な明るさを保てるという。例えば蛍光管の一部を電球ガラスに接触させて放熱させるタイプがある。
日立は分離と放熱を両立させるため、発光体側の最冷点から点灯回路側の口金まで銅板で伝熱させる方法を採用した。発光体と点灯回路の接合部まで蛍光管を伸ばして最冷点とし、銅板で囲む。点灯回路側にも銅板を仕込んで両者を接触させ口金まで伝熱し、放熱させる。
こうして分離と素早い点灯を両立させた。「点灯の速さは業界トップクラス」と、構造設計を担当した管球設計部の野村和男氏は胸を張る。
分離できる電球型蛍光灯は、実は1988年にも日立グループの会社が開発して販売したが、当時は消費者の理解が得られないまま販売を打ち切った。今回は独自性の高い環境配慮商品を求める西友と共同開発の形で新たに商品化した。現在は西友が独占販売しているが、4月からは他店の店頭にも並ぶ。
日立は消費者の環境意識の高まりを追い風に、「将来、電球型蛍光灯市場の3割を奪いたい」(広報)と、復活戦に意欲を見せる。