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欧州連合(EU)の欧州委員会は,携帯電話事業者の着信接続料の事実上の引き下げを含めた勧告案を2008年6月に提示。この勧告案がEU加盟各国の規制当局や携帯電話事業者の取り組みに影響を与えている。まもなく採択される見通しである勧告案の内容とその背景,各国の反応などを解説する。

(日経コミュニケーション編集部)

 欧州連合(EU)の欧州委員会が昨年6月に公表した着信接続料規制に関する勧告案が,いまだに波紋を呼んでいる。この勧告案は,加盟国間,固定・移動通信事業者間,先発・後発通信事業者間の複数に存在している着信側の接続料(以下着信料)の格差是正を目的としたものである。

 欧州では,通話発信と通話着信は市場を分けて接続料金規制の方法を決めている。その中で通信網への着信相互接続は,移動/固定通信事業者いずれの場合も,強い規制が課せられている。これは,通話の発信者は相手のネットワークを選ぶことができないため,着信網側は競争による値下げのインセンティブが働かないからである。

 勧告案は目的達成のために,移動体通信については料金規制におけるコスト計算方法を大幅に変更するべきとし,新たな料金規制を2011年末までに実施するよう各国規制当局に促している。欧州委員会のビビアン・レディング情報社会・メディア担当委員は,この勧告案によって着信料は現行料金から7割引き下げられるとしている。

EU加盟国間で着信料にばらつき

 勧告案に対するコンサルテーション(意見募集)は2008年9月に終了し,各関係者の意見は出そろった。しかしその反響は大きく,勧告案の審議はいまだ続いている。審議と並行して,欧州委員会は勧告案の採択を見越したかのように,加盟国の規制決定に対する圧力を高めつつある。

 EUの規制の枠組みでは,通話料の大部分を占める着信先の網側の事業者が請求する接続料,つまり着信料の水準を規制で定める。ところがこの料金水準は,加盟国間で大きな差がある(表1)。移動体通信の場合,最高額のブルガリア(18ユーロ・セント/分)と最低額のキプロス(2ユーロ・セント/分)では,9倍もの開きがある(2007年10月のデータ,図1)。このような開きは各国の地理条件,市場条件,インフラ条件,歴史的経緯などを反映したものだと基本的には理解できる。しかし,レディング委員は,「料金の差は規制の適用がEU各国で大きくばらついていることを表しているものであり,放置すれば統一市場に障害を招く」と再三にわたって指摘。これを問題視してきた。

表1●発信と着信に分けた際の市場の傾向と接続料の規制
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表1●発信と着信に分けた際の市場の傾向と接続料の規制
図1●主なEU加盟各国の音声における移動体着信料平均(加入者加重平均)<br>主要加盟国および最高額のブルガリアと最低額のキプロスの着信料を示した。
図1●主なEU加盟各国の音声における移動体着信料平均(加入者加重平均)
主要加盟国および最高額のブルガリアと最低額のキプロスの着信料を示した。
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