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 『シトリックス、サーバー仮想化製品「Citrix XenServer」の無償提供を開始』。これは,シトリックス・システムズ・ジャパンが2009年3月31日に発表したプレス・リリースのタイトルである。これを見て,記者は素朴な疑問を感じた。「今までも無償版があったはず。一体,何が違うのか?」と。

 プレス・リリースを読み進めていくうちに疑問は概ね解消した。だが先日,シトリックスへの取材を通じて,その背景まで理解することができた。実は,米Microsoftのハイパーバイザ「Hyper-V」と関係があったのである。

ライセンス上の制約を撤廃してシンプルに

 まず,今回の「XenServer無償化」の実態とは何か。それは,「無償のエディションを含めて4つに分かれていたXenServerのエディション構成を撤廃し,ライセンスのあり方を見直した」というものである。これにより,サーバー仮想化ソフトを中核とした4つのエディションは,無償の単一製品「Citrix XenServer」に統合された。加えて,以前は上位エディションに含まれていた高機能な運用管理ソフトなどを,有償の「Citrix Essentials」という新製品として切り出した。

 ここで重要なポイントは,シトリックスは従来,エディションの違い(すなわちライセンス契約の違い)によって利用できる機能を制限してきた,という点である。例えば,異なるハイパーバイザ間で仮想サーバーを移動させる「ライブ・マイグレーション機能」は,ハイパーバイザのカーネルが標準で備えている機能である。どのエディションのバイナリにもライブ・マイグレーション機能は搭載されているのだが,ライセンス・キーの種類によって機能制限をかけていた。

 今後は,こうしたライセンス上の機能制限を撤廃する。配布済みのハイパーバイザ(カーネル)が備える機能はすべて無償で利用可能とする。一方,ハイパーバイザとは独立したモジュールとして提供されていた運用管理ソフトは,有償で提供することになる。ソフトウエアとライセンスの関係が1対1で対応することになり,製品構成がシンプルで分かりやすくなったと言える。

Hyper-V 2.0とXenServerを同条件にする

 実は,XenServerのカーネルが提供する機能群は,そのまま,今後登場する「Hyper-V 2.0」の機能群(ライブ・マイグレーションなど)に呼応する。Hyper-V 2.0は,Windows Server 2008 R2に組み込まれるHyper-Vの新版である。そして,Hyper-V 2.0に未搭載の機能(プロビジョニングなど)は,ほぼそのまま,XenServerから切り出した運用管理ソフトの機能に呼応する。

 つまり,XenServerとHyper-V 2.0の機能レベルをそろえ,両者に欠けている高度な管理機能をCitrix Essentialsで提供する形となっている。これにより,Citrix Essentialsは,XenServerとHyper-Vの混在環境を,ハイパーバイザの違いを意識することなく管理できるようにしている。

 シトリックスは,XenServer向けの「Citrix Essentials for XenServer」を2009年4月7日に出荷した。今後,Hyper-V向けの「Citrix Essentials for Hyper-V」の出荷を予定する。

 ちなみに,XenServer向けとHyper-V向けの2製品に分かれている理由は,些細なことである。高可用性のためのHA機能は,Hyper-Vであればペアレント・パーティション(Xenのドメイン0に相当する管理OS用仮想マシン)にインストールする必要がある。このHA機能をMicrosoftがHyper-V用に提供するため,Citrix Essentials for Hyper-VにはHA機能が含まれないということだ。

 このように,シトリックスはマイクロソフトとの協調路線をとっている。「Hyper-V 2.0と同じ機能を無償で提供する」「Hyper-VとXenServerの相互運用性を高める」という2点が,XenServer無償化とCitrix Essentials投入の意味するところである。