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欧州連合(EU)の欧州委員会が2008年6月に提示した着信接続料(着信料)に関する勧告案を巡り,いまだ欧州各国が揺れている。既に2008年9月に勧告案に対するコンサルテーション(意見募集)は終了。だが,着信料の引き下げを要求する勧告案の採択は遅れている。直近の状況を解説する。

(日経コミュニケーション編集部)

八田 恵子/情報通信総合研究所 主任研究員

 着信料の引き下げを狙った欧州委員会の勧告案は,当初2008年10月の採択を目標としていた(図1)。ところが,採択は大きく遅れている。着信料の引き下げに各国の異論はないものの,多くの点で業界や規制当局に受け入れ難い内容であるためだ。欧州委員会は2月に勧告案の修正を検討したが,結局加盟国の支持を取り付けられなかったようである。その後,欧州委員会は,これまでの各国の意見に配慮したうえで最終案を取りまとめ,4月には勧告採択を目指すとしている。

図1●欧州委員会が出した勧告案の主要な論点
図1●欧州委員会が出した勧告案の主要な論点

修正案を提示し“激変”を緩和

 欧州委員会の目標は,各国間および事業者間の着信料格差の解消である。勧告案はこれを統一的なコスト・モデルで達成しようとしていた。現時点の修正案を基に推測すると,当初からの変更点は,大小事業者間の格差解消プロセスの緩和と新たな着信料規制の施行期限の先送りに大きく集約されるようである。主な変更点は,(1)コスト算定で仮定される事業者規模に柔軟性を持たせる,(2)新規参入事業者には一定期間(4年),非対称な料金設定を許容する,(3)不均等な周波数配分に起因する着信コストの差は認める,(4)施行期限は当初案(2011年末)から先送りとする(1~12カ月)──などである。

 (1)について当初案では,事業者が市場を均等に分け合うことが仮定されていたが,修正案では市場シェアは20%を標準とし,しかも当局の判断によってこの値を変更できるとした。(2)は新規参入事業者に対する配慮である。(3)は伝播特性の異なる周波数を使用する場合に生じるコスト差を配慮するもの。(4)は施行期限の設定について,当初よりも幅を持たせるものである。最も先送りした場合は2013年1月1日となる。また,新コスト・モデルを構築する余裕がない国には3年の猶予が与えられる。以上のように,着信料引き下げにおける各国規制当局が直面する変化は,ある程度緩和されるようである。

 ただし,欧州委員会はコスト計算において,あくまでも固定共通費を除外したボトムアップLRIC(最新設備を使って最も効率的に構築した場合のコストを実際の加入数見合いで除した算定方式)を死守する構えであり,全体の枠組みに大きな変更はない。欧州委員会内部の採決では反対12,賛成5,棄権10とされており,反対が賛成を大きく上回った。前述の修正案にもかかわらず,各国当局の多くが難色を示していることになる。