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東京・五反田にある学研の新本社ビル
東京・五反田にある学研の新本社ビル

 「3年前には編集部門を中心に月間約100万枚の紙を使用していた。これを少しでも減らしたいというのが当初の狙いだった」――。学習研究社(学研)の総務部の市原廣氏は,2007年9月に本格始動した紙使用削減プロジェクトについて語り始める。この取り組みは,社員の環境意識の高まりとともに成果を上げ,現在,2006年に比べて約17%削減することに成功した。年間のCO2排出量に換算すると約23.5トンを削減したことになる。

 学研は,小学生向け教材「科学」と「学習」をはじめ,学習参考書など教育関係の雑誌や書籍を中心に手掛けている出版社である。編集部門では校正紙を出力し,それに赤入れをするなどの作業が日常茶飯事であり,紙の使用量が一般の企業に比べて多いのが特徴だ。

 紙の使用量を減らせれば,CO2の排出量削減につながる。コピー用紙1kg当たりのライフサイクル全体のCO2排出量は,新生紙で約3.0kg,100%再生紙で約2.4kgと言われる。月間100万枚(約4トン)のコピー用紙を使用する学研のオフィスでは,使用量を1割削減すれば月間1.2トン前後のCO2排出量を削減できることになる。

 同社の場合,紙の削減に乗り出したそもそもの狙いはコスト削減にあった。A4コピー用紙の価格は1枚約60銭だが,月100万枚ともなると用紙代も大きな負担になる。トナーやコピー機の電気代もかかる。

 そこで,2007年9月から「カラーコピー節約大作戦」を開始した。「社内の利用実態を調べると,申請用紙や社内で使う資料のようにモノクロ印刷で十分な文書についても,カラー出力する人が多いことがわかった。カラーコピーはモノクロコピーに比べて印刷コストが数倍かかることから,ここから節約を呼びかけることにした」と,市原氏は当時を振り返る。

地道な啓蒙活動で月間10万枚を削減

 カラーコピー節約大作戦の仕掛けは,いたってシンプルなもの。社内掲示板やコピー機の前に,写真1のようなビラを貼り,社員の意識啓発を図った。

写真1●「カラーコピー節約大作戦」を呼びかけるビラ
写真1●「カラーコピー節約大作戦」を呼びかけるビラ

 この活動による成果は徐々に現れ始めた。そこで総務部では,紙使用量の実績をイントラネットで毎月報告し,社員にさらなる協力を呼びかけた。使用量が減っていく様子を見ると,もっと貢献したいという気持ちが芽生えるのだろう,社員の間に活動は定着していった。

 結果的に,2007年のコピー用紙の月間使用量は,前年と比べて約10万枚,1割ほどを削減できた。社員の意識を変えることが,活動を進めるうえでいかに重要かがわかる。

採光を工夫した明るい新社屋のオフィス
採光を工夫した明るい新社屋のオフィス