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 先般、筆者は大阪府の特別顧問として関西新空港(以下「関空」)の再生戦略作りに関与した。空港戦略は政府の投資計画や路線許認可に左右される。そこで、これまでの国の航空・空港政策を勉強し直したが疑問が噴出した。海外交易は日本の生命線だ。80年代までのモノづくりのニッポンは良港が支えた。今後は情報とヒトの流れが重要だ。ところが、日本の国際空港はすべてが欠陥空港だといっても過言ではない。最近は、モノづくりの時代のジャパン・バッシングが消えてジャパン・パッシング、あるいはナッシングといわれる。その理由を見た気がした。また、しばしば伝えられるJAL(日本航空)の経営不振の根っこにも実は国際空港の欠陥問題があると思う。3回にわたって、わが国の航空政策を議論したい。

成田も関空も欠陥「国際空港」

 日本の多くの空港が「国際空港」を名乗る。だが、いずれも中途半端だ。首都の成田空港は国内線との乗り継ぎ機能が極めて限られる。航空はネットワークビジネスだ。国内・国際が分断されていてはお話にならない。関空は国際・国内線の乗り継ぎができる24時間空港だ。ところが大阪駅から直通列車で行けない。直通のリムジンバスで約1時間もかかる。これは2つの意味で大問題だ。

 第1に、バスでは海外に飛び立つ乗客に対して空港アクセスの定時性が確保できない。渋滞のリスクを織り込むと実質所要時間は2倍程度必要だ。第2に国際路線の多くは空港所在都市の需要だけでなく、国内線乗り継ぎ客も見込んで採算をとる。一方、国内線は国際線乗り継ぎだけでは成立しないので、国際空港は国内路線の空港としてまず成功する必要がある。そうなると、ますます都心に直結する鉄道が必須だ。だが関空にはこれがない。国際空港としては致命的な欠陥だ。

 地方都市にも国際空港がたくさんあるが主にソウル(仁川)に飛ぶ。ソウル経由の韓国系キャリアで世界各地に飛べる。だが、なぜ地方空港から成田や関空を経由して日系キャリアで世界各地に行けないのか。日本の人口や経済力に照らせば、成田と関空の2カ所を結節点に国内主要都市と世界の主要都市を結ぶことは不可能ではない。成田は、巨大な東京という後背地を基礎票に国内各地の乗り継ぎ客を集めれば、世界の果てにでも飛ばせるはずだ。だが開港時の経緯から国内線は飛ばせない。関空にはそうした制約はない。だが、大阪の旺盛な国内線需要を伊丹にとられてしまっている。そのため、せっかくの24時間空港の機能が発揮できない。要は、成田と関空の問題は国内線がない、あるいは弱いことにある。

羽田と関空に注力

 となると、答は明確だろう。まず現在の東京・大阪における「国内空港」「国際空港」の均等使い分けをやめる。そして東京は羽田を、大阪は関空を中枢の国際空港に据え、成田と伊丹はあくまで補完空港と位置づける。たとえば国内・国際ともに重要路線(ニューヨーク、ソウル、上海など)は羽田に集約させる。成田は内外ともに長距離便と貨物を引き受ける。大阪では、伊丹は原則廃止し、あとは関空とする。この前提として関空と大阪都心を10分間隔、運賃1000円、所要時間30分強で結ぶ高速鉄道を整備する。

 羽田と関空は高速鉄道の整備と戦略的な路線配分をすることで、一流の国際空港になれる。これを国策で推し進めるべきだ。

上山 信一(うえやま・しんいち)
慶應義塾大学総合政策学部教授
上山信一 慶應義塾大学総合政策学部教授。運輸省,マッキンゼー(共同経営者)等を経て現職。専門は行政経営。2009年2月に『自治体改革の突破口』を発刊。その他,『行政の経営分析―大阪市の挑戦』,『行政の解体と再生など編著書多数。