悩み:発言の趣旨がよく分からなかったり、意見ではなく感想を言ったり、全然関係ない話を持ち出したり、感情をむき出しにして怒り始めたり…といった参加者への対応に困っています。
回答者:
日産自動車V-up推進E支援チーム
意見を述べているうちにいつの間にか感情が勝ってしまう。途中で自分でも何を話しているか分からなくなる。原因の1つは話が長過ぎることだ。こうした人には「一言で言うと?」と話をまとめてもらおう。ファシリテーターが書き取っても構わないが、本人に付せん紙などに書いてもらうとより有効だ。限られたスペースに内容を簡潔に記す作業を通じて、論点を絞り込んだり、だらだらした感想をそぎ落としたりする意識が高まる。
今話し合っているテーマと文脈が全く違う意見が出てきた場合に役立つのが、前出の「グラウンドルール」だ。「予定外の議題を持ち出さない」というルールを盛り込み、参加者全員に見える場所に張り出す。議題と無関係な意見が持ち出されたら、「このルールに合っていますか」と指し示す。
とはいえ、意見を受け止めることはファシリテーターの役割としては重要だ。そこで「こんな感じでしょうか?」と取りあえず書き留める。本筋から離れた意見を収容するために、「パーキング」とひそかに呼ぶ場所をホワイトボード上に確保し、「今の議論の『的』ではないが、良い意見なので尊重している」というしるしを見せる。ファシリテーターが意見を軽視したり、発言者を侮ったりする態度を見せると、その発言者の意欲をくじくだけでなく、会議全体の雰囲気にも影響する。
感情的になり怒り出す人もいる。第1のタイプは、意見の食い違いなどをきっかけに過去の不愉快な経験を思い出し、怒りが止まらなくなるタイプ。こういう人には「ガス抜き」の時間を与えることが効果的だ。「大変でしたね。その経験を全員で共有しましょう」と言って、5分なり10分なりの時間を提供して話してもらう。「時間が押しているのに、自分の発言のために時間を割いてくれた」とを感じれば、大方の人は時間内に抑えてくれる。
抵抗勢力化を予防する
もう1つのタイプは、議論の内容ではなく、「自分の意見を聞いてもらえない」「尊重されていない」というフラストレーションがたまっているというもの。理由がよく分からないのに突然怒り出す人はこちらのタイプが多いかもしれない。こうした人に対しては、意見に「なるほど」とうなずき、内容をホワイトボードに書き出すなどして、その貢献を参加者全員にアピールする。
ごくまれではあるが、「自分のいないところで話し合えばいいだろう!」と怒りに任せて会議室を出てしまった人もいる。こういう人とはその場で話し合うことが必要だ。放置しておくと、会議で決まったことを実行する段階になって、必ず「抵抗勢力」となってしまうからだ。会議を中断して休憩を取るか、ほかの参加者にグループワークをしてもらうなどして、ファシリテーターも会議室を抜け、時間をかけて対話をする。
こうした行動を取る人は自分のやり方にこだわりを持ち、成功体験を多く持っている場合が多い。言い分をきちんと聞き、相互理解を深めておくことで、実行段階では率先してアクションプランを遂行し、若手を引っ張ってくれる可能性が高まる。かみ合わなかったり感情が爆発する会議は時間もかかり気も使うが、山谷があったほうが実行への機運が高まると実感している。