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 そもそも、小さなものから大きなものまで、ソフト開発の必ずどこかには「感動」があったはずだ。感動を持ち込む術は決して特別難しいものではない。「感動するチーム」のどれもが共通して持つ考え方は、「絆づくり」だ。絆とは、仲間との絆、ユーザーとの絆、そして仕事あるいはプロジェクトとの絆である。

 「目の前の仕事は、顧客や社会に価値を与えられる重要なものである」。この理解が、働く意欲を刺激する。だから主体的に取り組む。

 主体的に取り組むからこそ、高い目標に挑戦できる。だが、その高い目標を達成するには、仲間との協力が不可欠。自分の力と他者の力が組み合わさって目標にたどり着いたとき、喜びと確かな達成感が得られる…。

 人が働く姿の理想を描写してみると、こんな雰囲気だろうか。仕事の意味や意義に対する探求心、達成意欲、連帯感など、重要ないくつかを刺激する“仕掛け”が、フェリカネットワークスやミツカンの取り組みには盛り込まれている。

やる気と結束は放っておけば弱る

 「個々人のモチベーションが高く、活気のある職場には、報酬や出世といった『経済的原動力』だけでなく、仕事の社会的意義や良好な人間関係といった『非経済的原動力』がバランス良く存在している」。組織の活性化手法について詳しい、野村総合研究所の齊藤義明コンサルティング事業本部事業企画室長はこう語る。

 ひるがえってITの現場はどうか。ソフトの品質保証やチームビルディングのコンサルティングを手掛けるデバッグ工学研究所の松尾谷徹代表は「業務上仕方のない面もあるのだが」とした上で、「多くのソフト開発現場には、やる気を減退させる要素や、仲間意識を弱める要素が目立つ」と語る。

 やる気を減退させる要素の一つが、自分の作業が全体のどこに貢献しているのかが見えにくいこと。ITベンダーで働いている開発者を考えてみよう。ある程度の規模のプロジェクトであれば、計画を基に作業内容がブレークダウンされ、開発者らに指示書が渡される。「人間の性質上、作業量と期日という情報だけではプレッシャーしか感じられない。作業の意味や意義、工夫の余地といった、意欲の増進につながる情報が不足している」(松尾谷代表)。

 「末端は作業のみ」と高をくくっていると、ソフト全体の品質を悪化させる。「プログラマのやる気で、ソースコードの品質は大きく変わる」(ウルシステムズでプロジェクトマネジメントのコンサルティングを手掛ける本園明史シニアコンサルタント)からだ。

 「仕事なのだからやれ」と言われればそれまでだが、生身の人は理屈では割り切れない。高圧的な態度で迫られれば嫌な気分になるし、感情の落ち込みや無用なプレッシャーはミスを招く。

必要十分な意思疎通がされていない

 やる気や仲間意識に影響するもう一つのネガティブな要素として、エンジニアの多くが持つコミュニケーションへの苦手意識や無頓着さも見逃せない。

 モチベーションが低くても、人間関係が円滑であれば組織は機能するものだ。上司と部下との関係を健全に保ち、開発者同士で助け合う雰囲気を醸成するには、あいさつをはじめとした何気ないコミュニケーションが効果を発揮する。「気軽なコミュニケーションは、作業遅れなどのリスクを早期に発見したり、トラブルの解決策を見いだしたりするための糸口にもなる」(ウルシステムズの本園シニアコンサルタント)ことも見逃せない。

 多くの開発プロジェクトは短期に異なる企業、立場、経験の人々が集まるのが通例だ。つまり、「ソフト開発には本来、一般の業務より高いコミュニケーションスキルとコミュニケーションの密度が要求されている」(デバッグ工学研究所の松尾谷代表)と言える。

 だが、構成員が持つスキルは十分ではない。しかも現場にはコミュニケーションの密度を高めるための余裕も仕掛けもない――。こんな構図が見えてくる。

「いい人を集めれば」という幻想

 IT業界に限らず産業界全体で「いい人を集めれば何とかなる」という思い込みがまん延していることも、組織力の低下に拍車をかける。「一人ひとりは優秀だったとしても、集まっただけでは組織は機能しない」。組織活性化のコンサルティングを手掛けるピープルフォーカス・コンサルティングの安田太郎シニア・コンサルタントは指摘する。「ハイパフォーマンスチームを作るには、しかるべき手段が必要。これを認識している人があまりにも少ない」。

 ユーザー企業のシステム部門は、間接部門ならではの課題を抱えている。「間接部門は最終顧客からの反応が見えにくい。顧客の声を届けたり、仲間意識の維持に気を配ったりと、使命感ややる気の維持に向けた工夫や配慮がいっそう必要だ」と野村総合研究所の齊藤室長は言う。「特に忙しい間接部門ほど、社員は『何のためにこの仕事をしているのかがわからない』状態に陥りがち」。こう続ける齊藤室長の言葉に、システム部門の姿が重なる。

「絆」がチームを活性化

 ならばなおさら現場における「絆」を結び、それを強固にすることが不可欠だ。仲間や顧客など、他者と自分を結ぶ絆。自分が手掛けている仕事あるいはプロジェクトとの絆。これらの絆は、システムに携わる人々が所属するチームでより良く働くために必須の要素といえる(図4)。

図4●絆を意識的に結び、強めるアクションが今後のソフト開発には不可欠だ
図4●絆を意識的に結び、強めるアクションが今後のソフト開発には不可欠だ
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 絆を強めるための重要なアクションをまとめると、次のようになる。

(1)基礎体力としてのコミュニケーション力を養成する
(2)コミュニケーションの場と道具を用意する
(3)仕事の意味を再定義し浸透させる

 以下それぞれについて、代表的な実践企業の取り組みや専門家のアドバイスを見ていこう。

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