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ウィルコムは2009年4月末に次世代PHS「XGP」の試験サービスを開始した。サービス地域は東京の山手線内の限定された地域で,対象ユーザーは法人に限る。そこには,サービス地域の広さを競うのではなく,パフォーマンスの高さで勝負を挑むという同社の狙いがある。

写真1●ウィルコムが本誌の取材で見せた試験システム
写真1●ウィルコムが本誌の取材で見せた試験システム
実効速度は,18Mビット/秒を超えていた。

 ウィルコムが本誌の取材時に見せたデモでは,下りの実効速度が18Mビット/秒以上に達するなど,XGPの能力の高さを実証してみせた(写真1)。

 ただ,一足先に2009年2月末から試験サービスを始めたUQコミュニケーションズの「UQ WiMAX」とは対照的に,対象モニターは法人限定。エリアもUQと比較してかなり狭く,山手線内のごく一部になる(表1)。

表1●ウィルコムの「XGP」とUQコミュニケーションズの「UQ WiMAX」の比較<br>先行するUQコミュニケーションズと比べると,サービス地域や対象ユーザー,基地局数が限定されていることが分かる。
表1●ウィルコムの「XGP」とUQコミュニケーションズの「UQ WiMAX」の比較
先行するUQコミュニケーションズと比べると,サービス地域や対象ユーザー,基地局数が限定されていることが分かる。
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密集地での実効速度をアピール

 UQと比べて“限定だらけ”に見える理由は,XGPが採用するマイクロセルの実力を検証するため。検証を優先するために「エリアをあえて絞った」(喜久川政樹社長)という。

 セルサイズ(基地局のカバー範囲)が小さいマイクロセルは,一つの基地局が収容する人数が少なく,ユーザー一人当たりの実効速度を最大化できる。同社の上村治・次世代事業推進室長は「都心などの密集地では,実効速度が高いマイクロセルが優位」とみる。そこで今回の試験サービスでは,むやみにエリアを広げるのではなく,あえて高密度に基地局を設置し,マイクロセル運営のノウハウをいち早く積むことにした。既に山手線内の一部に100局程度の基地局を設置したという。

 UQ WiMAXのベースとなる技術であるモバイルWiMAXが世界で商用化され始めているのに比べ,XGPは大規模な実地評価の実績がない。エリアの拡大よりも慎重が検証が必要だったという事情もある。

 一方,ある関係者は「ウィルコムは,XGP展開の資金が不足しているのではないか」と指摘する。同社は,昨年から複数の国内の通信事業者に接触し,出資を持ちかけたと複数の関係者は語る。エリア限定で試験を開始したのは,資金不足のためと見る向きもある。

 これに対して喜久川社長は「2009年度の設備投資金額は,200億~300億程度で例年とほぼ同水準。基本的には,現行PHSサービスのキャッシュフローでまかなえる」と,資金面で問題が無いことをアピールする。同社長は,ウィルコムの筆頭株主であるカーライル・グループと増資の話し合いを進めていることを明らかにしたが,これもXGPの展開を加速するためだという。

 ウィルコムは6月以降に試験サービスを本格化させ,10月以降に正式サービスを開始する。UQが急ピッチでエリアを拡大し,2010年にはNTTドコモがLTE(long term evolution)を導入するなど,競争はますます激しくなる。

 密集地での実効速度で勝負する戦略にしても,技術面での検証を短期間で終え,いち早く商用サービスにこぎつける必要がありそうだ。