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◆今回の注目NEWS◆

総務省の平成21年度補正予算概要がまとまる(総務省:「平成21年度総務省所管補正予算 (案)の概要」、4月27日)

【ニュースの概要】政府は2009年4月27日、急速な景気悪化に対応するための2009年度補正予算案と税制改正関連法案を決定し、衆議院に提出した。補正案の総額は13兆9300億円で過去最大規模。


◆このNEWSのツボ◆

 リーマンショックに新型インフルエンザ騒ぎが加わって、経済が大きな打撃を受ける中、平成21年度補正予算が5月13日に衆議院を通過し、6月には自然成立する。財政支出だけで14兆円に近い大型補正予算である。

 この補正予算の中で、IT関連の全体像がどうなっているかについては、適当な資料が見つからなかったが、総務省や経済産業省、文部科学省それぞれが2000億円を超える予算を喧伝しており、全体としても相当な規模であることは間違いない。各省所管の詳細をいくつか見てみよう。


 この予算を見ると気づくことがある。それは、省エネ家電購入に対するエコポイント付与(2946億円)や学校でのICT環境整備(2087億円)、ブロードバンドゼロ地域の解消(500億円)に代表されるように、全国津々浦々を対象として施策を講ずるという、少し悪い言葉を使えば「ばらまき型」の施策が多いという点である。

 「ばらまき」というと言葉は悪いが、経済対策として考えた場合に、効果や趣旨を考えると、悪くはない。古くから経済対策といえば「公共事業」であるが、これとて、土木建設業を焦点とした全国での事業創出が狙いである。そういう意味で言えば、妙な政策的な思惑で、景気刺激効果が特定分野に限られるよりは、「遅れた」あるいは「世界でも最高水準のTインフラを一挙に普及させる」という発想は悪くないのではないか。

 他方、多少分野を絞った補正予算対策を見ると、「?」と思うようなものも入っている。例えば、電子政府・電子行政の推進に300億円という、結構大きな金額が充てられるが、内容を見ると、「霞が関クラウドの推進(200億円)」「新しい公的個人認証システムの開発実証・オンライン申請サポート(90億円)」などに、結構な金額が使われることになっている。


 しかし、「霞が関クラウド」は、果たしてクラウド・コンピューティングの本当の意味と効果を理解したうえで提案されているのであろうか? クラウド・コンピューティングの先進性は、ブロードバンド・ネットワーク技術を前提とした先進的な仮想化・分散化技術に支えられている。しかし、どうも予算説明を読むだけでは、単に新しい行政用データセンターが構築されるだけではないかと思えて仕方ない。


 また、公的認証とオンライン申請に、再び、かなりの金額が費やされているが、ほとんど利用されていない現在の公的個人認証システムと、どこがどう変わるのだろうか? 全国の自治体と中央政府で結構な金額が費やされたパスポートのオンライン申請事業は、数年後に事業自体が放棄された(関連記事)。


 こうした経験に学び、同じ過ちが繰り返されることだけは避けたいものである。

安延 申(やすのべ・しん)
フューチャーアーキテクト社長/COO,
スタンフォード日本センター理事
安延申
通商産業省(現 経済産業省)に勤務後,コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト社長/COO,スタンフォード日本センター理事など,政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。