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 趣旨(目的・背景・狙いなど)の元となる「ネタ」はどこにあるのか?情報化企画フェーズできちんと問題点の洗い出しや分析を行っていれば,そのアウトプットがそのまま趣旨として利用できるだろう。しかし現実には,大企業のかなり大きな規模のシステム構築でもない限り,情報化企画フェーズは個人あるいは数名のメンバーが現行業務と掛け持ちで行うことがほとんど。そして情報化企画といっても,現状で噴出している現象を問題点として数枚の紙に箇条書きや表形式でまとめているだけのケースが多いのである。

 もちろん,この問題点をまとめた資料が,趣旨を作成する上での「たたき台」になることは多い。だが,それだけでは趣旨としての視野の広さ,視点の高さという点で不足する場合がある。そこで,たたき台に加えて,筆者が実際にRFP作成支援を行う場合に参考にする資料として以下のようなものがある。

(1)経営理念や年次のスローガン
(2)年次あるいは中期経営計画
(3)社長あるいは部門長の生の声(インタビューを行う)
(4)業界の外部環境

 上記の(1)~(4)に共通するのは,すべて経営レベルの資料であるということだ。この経営レベルの視点を「たたき台」にぶつけて,矛盾やズレがないか検証することは非常に重要である。

 例えば,経営理念に「すべてのお客様はすべての社員が対応します」とあるのに,新システムでは「顧客ごとに特定の専任社員が付き,営業活動するための顧客情報のセグメント化」といった目的や狙いが挙げられたら,これは明らかに矛盾といえるだろう。また中期計画で「最重要課題は営業利益率の向上」となっているのに,システム構築の目的が「売り上げ増大によるシェアの拡大」となっていれば,これは一度きちんと目的の再確認をすることが必要になってくる。

要件定義工程で趣旨は議論されない

 上記二つはやや極端な例かもしれないが,このような矛盾やズレは,後々大きな影響を及ぼす可能性が高い。特に,趣旨でのズレは,システム開発フェーズよりも,運用フェーズでその影響が大きく,思ったようなシステム投資効果が上がらないということの原因になりやすい。

 システム開発の「V字」というのをご存じだろう。一般的には要件定義から総合テストの関係を示したものであるが,これを拡大して,情報化企画フェーズとRFPを加えてみた(図3)。情報化企画フェーズの評価はシステム稼働後の運用フェーズで初めて分かる。その情報化フェーズの結論がまさにRFPの趣旨なのだ。

図3●システム構築における各開発フェーズの対の関係(V字)
図3●システム構築における各開発フェーズの対の関係(V字)

 逆に言えば,システム開発プロジェクトが始まってしまうと,要件定義などの上流工程でも,この趣旨レベルの上位概念が議論されることはほとんどない。調達の段階で,しっかりとベンダーに伝えておかないと,後から取り返す場はあまりないのである。

永井 昭弘(ながい あきひろ)
1963年東京都出身。イントリーグ代表取締役社長兼CEO,NPO法人全国異業種グループネットワークフォーラム(INF)副理事長。日本IBMの金融担当SEを経て,ベンチャー系ITコンサルのイントリーグに参画,96年社長に就任。多数のIT案件のコーディネーションおよびコンサルティング,RFP作成支援などを手掛ける。著書に「RFP&提案書完全マニュアル」(日経BP社)。