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 ネットブックと呼ばれる低価格のパソコンが相変わらずの人気である。ネットブックが登場した当初は,製品の価格を抑えるためにLinuxが使われることも多かったが,最近のネットブックではマイクロソフトのWindows XPをプリインストールしているものが圧倒的に多い。Linuxに対抗するために,マイクロソフトがネットブック向けの低価格なWindows XPのライセンスを用意したからだ。

 そもそもネットブックの登場当初にLinuxを搭載した製品が多かったのは,少しでも価格を安くするためである。ネットブック市場が盛り上がりを見せ,マイクロソフトが安いライセンス料金でWindows XPを提供し始めると,LinuxよりもWindows XPを搭載したネットブックが次第に増えてきた。今では,ほとんどのネットブックでWindows XPをプリインストールしている状態になっている。

 このネットブック向けのWindows XPが,通常のWindows XPと異なるのはもちろんライセンス料金だけではない。ライセンス料金を低く抑える代わりに,いろいろな制約が加えられている(参考記事)。具体的には,OSとしての機能は通常のWindows XP Home Editionと変わらないものの,プリインストールできるパソコンの対象をマイクロソフトが「ULCPC(Ultra-Low-Cost PC)」と定義したものに制限している。ULCPCとして認められるには,Atomなどの低速シングルコアのCPU, 14.1インチ以下のディスプレイ,1Gバイト以下のメインメモリー,160Gバイト以下のハードディスクまたは32Gバイト以下のSSD(Solid State Drive)といった制約があるらしい。通常はOSの利用条件として「~以上」などといった必要最小限の仕様を書く場合が多いが,「~以下」といったように上限を設けることで利用できる環境を制約しているのが,ULCPC向けライセンスの特徴である。

 先ほど,「らしい」と書いたのは,実はULCPC向けのWindowsライセンスについては,あくまでOEM先であるパソコン・メーカーとの間の契約のため,マイクロソフトからは詳細が明らかにされていないからだ。そのため,今回の話は筆者が独自に調査した情報で書いている。もしかすると,細かい点では違っている部分があるかもしれないことを,あらかじめご了承いただきたい。

XPモデルではスペックがダウン?

 前述したULCPCの仕様で,市場に出ている低価格をウリにしたほとんどのネットブックでは問題がないはずである。このため,筆者もこのULCPCの仕様に対して,特に何とも感じていなかった。だが,つい先日,ソニーが発表したVAIO type PのWindows XP搭載モデルを見て,突然違和感を感じてしまった。

 今年1月に登場したVAIO type Pは,小型軽量ながら使いやすいキーボードや高解像度の液晶を搭載したブームとなっている製品である。だが,これまでプリインストールされていたWindows Vistaの環境では動作がややもたつき気味で,より軽いWindows XPを搭載してほしいと望む声が大きかった。こうした声に応えて,ようやくこの6月6日にWindows XPモデルのVAIO type Pが新たに発売されることになったのである。

 このVAIO type P XPモデルの仕様を見てみると,単純にOSがVistaからXPになっただけではない。それ以外の部分についてもXPモデルとVistaモデルの間で,いろいろと違いがある。特に違いの大きいメモリーとディスクについて詳しく見てみると,メモリーはVistaモデルが2Gバイト固定であるのに対し,XPモデルは1Gバイト固定になっている。ディスクは,ハードディスクの場合は変わらないものの,SSDの場合はVistaモデルでは256G/128G/64Gバイトの3モデルから選べるのに対して,XPモデルではVistaモデルには存在さえしない32Gバイトという小容量のモデルしかない。

 ここで,先ほどのネットブック向けWindows XPのライセンス条件を思い出してほしい。XPモデルにおけるメモリーやディスクにおける制約が,マイクロソフトがULCPCとして定義している条件と見事に合致していることがわかる。つまり,せっかく発売されたXPモデルだが,実はマイクロソフトのライセンス条件のせいで,仕様が制限を受けている可能性が高い。VAIO type Pがネットブックに入るかどうかは議論の余地があるところだが,少なくともネットブックの上位機種ではULCPCの制限が問題となるようになってきたということに気付かされた。

 その一方で,マイクロソフトは実はULCPCの仕様を,昨年の発表以来たびたび変更している。たとえば,SSDに対する上限が32Gバイトになったのも,つい最近の5月のこと。それまでは,SSDについては上限が16Gバイトとなっていた。ハードディスクについても,当初は80Gバイトまでに制限されていたし,対象とするCPUも何度も追加されている。このように,マイクロソフトのライセンス対象を決める“さじ加減”次第で,実は市場に出るネットブックの仕様が変わる可能性があるということだ。

 もちろん,マイクロソフトのULCPCライセンス契約は,パソコン・メーカー側に必ずしも強制されるものではない。ULCPC向けではない通常のWindowsをライセンスして,自由にプリインストールしたネットブックをパソコン・メーカーが出してもよい。とはいっても,現時点ではULCPC以外へのWindows XPのプリインストールが難しくなりつつあることや,実質的なコスト増を合わせて考えると,なかなかULCPCの制約を受けないネットブックを出すのは難しいだろう。そう考えると,確かにあくまでパソコン・メーカーとマイクロソフトとの間の契約の話だが,1ユーザーとしてもなんともすっきりしないところだ。