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プロティビティジャパン
ディレクタ 公認会計士
東 義弘

 多くの3月決算上場企業が,内部統制報告制度(J-SOX)適用初年度の対応を終えて,ほっとしているのではないか。何しろ初めての制度である。企業も監査人も不慣れな状況のなか,何とか初年度対応を終えた企業も少なくないようだ。

 J-SOX初年度はとりあえず乗り切ったとはいえ,多くの企業がその対応に課題を残していると言っても過言ではない。対応が過度に保守的になっているケースが多いからだ。詳細かつ広範囲な文書を必要以上に作ってしまった,評価対象のコントロール数が膨らんでしまった,などが挙げられる。

 だが,J-SOXは1年で終わるものでない。毎年続く制度である点を忘れてはならない。上記の課題を放置しておくと,多大な社内外のコスト,評価担当者や関係部署の負荷がと続くことになる。このままでは社内の理解を得られず,内部統制を自社の仕組みとして定着させるのが困難になってしまう。

 J-SOXの取り組みを自社に定着させるためには,「過度に保守的な対応」の効率化に取り組む必要がある。この連載では,J-SOX適用2年目以降に内部統制の効率化に向けてどう取り組むべきかを7回のシリーズで解説する。

 執筆は,日本版SOX法(J-SOX)対応後の企業経営を考える非営利団体であるAfter J-SOX研究会のメンバーがリレー形式で担当する。今回は総論として,適用初年度の問題点と,2年目以降に目指すべき方向を概観する。

2年目以降も「重大な欠陥」が改善しないと株価が下がる

 J-SOX対応の話題に入る前にまず,米国におけるUS-SOX法404条への適用初年度の状況とその後の推移を見ておこう。日本での適用2年目以降を考えるうえで参考になると思われるからである。

 US-SOX適用初年度に「重大な欠陥」はどれだけ報告されたのだろうか。「重大な欠陥」はJ-SOXの「重要な欠陥」に相当し,開示対象となる内部統制上の問題点のことである。米Audit Analyticsの調査によれば,US-SOX法の早期適用対象となった大企業3700社のうち,16.9%にあたる624社が「重大な欠陥」を報告した。

 だが,その後の推移を見ると,「重大な欠陥」を報告する企業は年を追うごとに減っていく。適用4年目では4012社中,7.0%の280社となっている。US-SOX法対応にかかるコストも,適用初年度は1社当たり平均440万ドルだったが,適用4年目には同170万ドルへと大幅に減少している(米Financial Executives Internationalの調査による)。

 この結果から,米国のUS-SOX法早期適用企業は適用初年度以降も継続して改善活動とコスト削減に取り組み,内部統制の仕組みを維持可能なものとする努力を続けていると考えられる。

 では「重大な欠陥」を報告すると,企業はどれほどのダメージを被るのだろうか。米国で「重大な欠陥」を公表した企業の平均株価を見る限り,適用初年度の平均株価への影響はほとんどないようだ。

 2年目以降は状況が異なる。2年目以降に「重大な欠陥」を改善した企業の平均株価は上昇したのに対し,2年目以降も改善できなかった企業の平均株価は下落したと報告されている。重要な欠陥が見つかったことよりも,その後に経営者や企業が内部統制の整備にどう取り組んだかが,平均株価や企業価値に影響していると考えられる。

 J-SOX適用初年度には,一定数の日本企業が「重要な欠陥」を報告するだろう。問題はその後の対応である。事業年度末に存在する重要な欠陥は「今後改善を要する重要な課題」という意味であり,その改善を図ることが大切になる。経営者の姿勢が企業価値の維持・向上につながるといえるだろう。